2012 Fiscal Year Research-status Report
新規フッ化鉄材料の開拓と二次電池用正極材料としての応用
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24750181
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 一彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (30574016)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電池 / フッ化物 |
Research Abstract |
本研究ではアモルファス構造を持ち、比表面積が大きいというユニークな特徴を有している高比表面積金属フッ化物の電極材料として応用に着目し、特に高比表面積フッ化鉄(III)の合成法を確立すること、その物理的及び化学的性質を調べること、二次電池用正極としての応用を目指してその電気化学的特性を評価すること、さらに正極材料として高性能化させることを目的として研究を行っている。 平成24年度は鉄の有機鉄錯体を出発物質として、種々のアルコール中で無水フッ化水素と反応させることで、フッ化鉄(III)を合成した。すでに過去の報告でフッ化アルミニウムについて同様の材料が触媒としての応用を目指して検討されており、これをもとに本研究でも合成方法の検討を行った。ここでは特に出発物質中におけるFeとFの比率について生成物の性質に対するその影響を系統的に調べた。まずフッ素化度の低い前駆体の合成段階において有機鉄錯体とフッ化水素を様々な比率で混合し、加熱しながら真空化で十分に乾燥することでドライゲルを作成した。X線回折測定でその結晶性を調べたところアモルファス構造を持つことが分かった。さらにこの前駆体を高温でフッ素化することでフッ素化度の高いフッ化物を合成した。得られたフッ化鉄(III)はBET法による比表面積測定、X線光電子分光分析による表面構造分析、X線回折測定による結晶構造分析などでキャラクタリゼーションを行い、最適なFeとFの比率を探索した。比表面積はフッ化アルミニウムほどではないが、その構造はアモルファスであることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は高比表面積フッ化鉄の合成がメインのターゲットであり、また得られた物質について電気化学測定以外のキャラクタリゼーション(比表面積、結晶構造、表面構造)を行うことを目的としていた。現在までのところ、これらの目的はほぼクリアしており、次年度の電気化学測定を用いた電極材料としての評価へ展開していく段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には予定通り、フッ化鉄系材料の合成とキャラクタリゼーションが行われたため、残りの期間はこの材料を用いて作成した電極の二次電池用正極材料としての性能を調べる。対象とする二次電池としては、すでに広く実用化が進んでいるリチウム二次電池とポストリチウム電池の最有力候補であるナトリウム二次電池である。三電極式セルによる基礎的なデータの蓄積と、二電極式セルによる、より実用に近い電池性能の評価を平行して行う。電池性能としてはレート特性とサイクル特性に重点を置いて評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度はカーボン材料とのコンポジット化に関する検討を行う。平成24年度から未使用金は、材料のキャラクタリゼーションで再現性をとるために、平成25年度に一部再実験を行うために使用する予定である。 コンポジット材料合成用カーボン材料としてはアセチレンブラックを用いて、遊星ボールミルにて高比表面積FeF3とのコンポジット化を行う。結晶性FeF3に関する過去の報告によると、ミリング時間によって結晶性の低下やそれにともなう充放電特性の低下が起こる。本材料はアモルファスであると予想されるため、ミリング時間の構造に対する影響については未知であり、初期的にはX線回折法とX線光電子分光法でミリング時間の影響を調べる。X線回折からは結晶性に関する、X線光電子分光法からはFeF2とCxF(or(CF)n)の生成に関する情報が得られる。 基礎的な電気化学特性は3電極式セルを用いて評価する。電解質にはリチウム電池の場合は1M LiPF6-EC/DMC(1:1、EC: エチレンカーボネート、DMC:ジメチルカーボネート)を用い、ナトリウム電池の場合は1M NaPF6-PC(PC: プロピレンカーボネート)を用いる。ここでは電極としての基本的な特性を評価することを目的として、サイクリックボルタンメトリーや小さな電流値での定電流電解法を用いる。またミリング時間と比表面積がどのように電極特性に影響を与えるかについて系統的に調べ、合成条件を最適化する。充放電試験で低電位側のカットオフ電位を変化させることによって、反応機構を調べる。 引き続き、最も良い条件で得られた高比表面積FeF3電極について2電極式セル(対極はリチウムまたはナトリウム、電解液は上記と同様)を用いて充放電特性を評価する。ここではレート特性とサイクル特性を評価する。
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