2013 Fiscal Year Research-status Report
二種の鎖状分子の同時配向制御と有機薄膜太陽電池の異方的な電子物性に関する研究
Project/Area Number |
24750189
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
溝黒 登志子 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 主任研究員 (90358101)
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Keywords | 分子配向制御 / 構造解析 / 有機薄膜太陽電池 / 摩擦転写 / 導電性高分子 / 導電性オリゴマー / 鎖状分子 / 薄膜プロセス |
Research Abstract |
本研究ではp型とn型の鎖状π共役分子の配向制御技術を確立し、配向制御した有機薄膜太陽電池特性と偏光応答性を評価することで、異方的な電子物性と分子配向との相関を調べる。オリゴチオフェンを始めとする鎖状π共役分子は、分子鎖が基板に対して平行に配向すると、電荷の移動が促進され、膜厚方向の導電性が向上する。同時に偏光応答性も生じる。しかし鎖状π共役分子を基板に平行方向に配向させることは困難であるうえ、2種類以上の鎖状分子を同時配向させた太陽電池の報告例はほとんどない。 当方が有する摩擦転写法を用いて基板に平行に配列したp型導電性高分子膜を形成し、この上にp型鎖状π共役分子を真空蒸着すると、下層の高分子配向膜をテンプレートとし、高分子の配列方向に平行に配列したp型鎖状π共役分子膜を容易に得られることが分かっている。前年度ではp-n接合型素子において、p層、n層共に基板平行に一軸配向させることに成功した。 H25年度は、p-n接合型素子中のn型分子の配向構造を微小角入射X線回折法でより詳細に解析し、複数のn型分子において非常に配向度が高いn層を形成出来ていることが分かった。 次にp型分子とn型分子を共蒸着して混合層(i層)を有するp-i接合型素子を形成し、i層の相分離構造と分子の配向を評価したところ、i層はバルクヘテロ接合型素子に適した数十nm単位の相分離構造を形成しており、i層中のp型鎖状分子は基板平行に一軸配向していることが分かった。さらに、p-i層中のp型分子が基板に対して平行に一軸配向した有機薄膜太陽電池と、素子構造は同じだがp-i層中のp型分子が基板に対してランダムに配向している有機薄膜太陽電池を作製し太陽電池特性を評価したところ、基板に対して平行に配向したp型分子からなる素子の変換効率の方が高くなることを見い出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H25年度は、p-n接合型素子中のn型分子の配向構造を微小角入射X線解析法でより詳細に解析し、複数のn型分子において非常に配向度が高いn層を形成出来ていることが分かった。次にp型分子とn型分子を共蒸着することでp-i接合型素子を形成し、i層の相分離構造と分子の配向を評価したところ、i層はバルクヘテロ接合型素子に適した数十nm単位の相分離構造を形成しており、i層中のp型鎖状分子は基板平行に一軸配向していることが分かった。このようにp-n及びp-i接合型素子中の鎖状分子の配向および相分離構造の制御と評価は概ねH25年度の研究実施計画の目標を達成できており、おおむね順調に進捗している。しかしながら、p-nおよびp-i接合型素子特性が低いため、さらなる素子特性向上のために新たな素子構造を採用することとした。従って素子特性評価の点では当初予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はp-i-n型有機薄膜太陽電池において、新たな素子構造を採用して、p層、i層、n層それぞれの膜中の鎖状分子が基板に対して平行に配向した太陽電池を作成し、素子特性評価を行う。具体的には、逆型素子と呼ばれる構造を採用し、n型半導体層をITOに近い側に形成してITOを陰極として用い、他の有機層を製膜後、金属電極としてAlやMgよりも化学的に安定なAuやAgを用い、素子として安定駆動させる。その上でn-p接合型素子等を形成して評価し、素子中のp,n型鎖状分子の配向と異方的な電子の発現に関する知見を得る。 最後に得られた結果を取りまとめ、学会発表、論文投稿等成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度にp-i-n型有機薄膜太陽電池において、p,i,n各層中の鎖状分子が基板に対して平行に配向した太陽電池を作成し、素子特性評価を行うことで配向制御による異方的な電子物性の発現に関する知見を得、学会発表予定であった。しかし、当初予定の素子構造では素子特性が悪化した。そこで、新たな素子構造で太陽電池を形成・評価するともに、学会発表を行うこととしたため未使用額が生じた。 次年度は、p-i-n型有機薄膜太陽電池において、新たな素子構造を採用して、p層、i層、n層それぞれの膜中の鎖状分子が基板に対して平行に配向した太陽電池を作成し、素子特性評価を行うことで配向制御による異方的な電子物性の発現に関する知見を得るとともに学会発表することとし、未使用額はその経費に充てることとする。
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