2012 Fiscal Year Research-status Report
チミン複合化微小金属ナノ粒子の光可逆的配向制御による強磁性素子の開発
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24750193
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
宮林 恵子 静岡大学, 工学部, 准教授 (50422663)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / 組織化 / 光反応 |
Research Abstract |
本研究は、有機保護剤として光応答性化合物を金属ナノ粒子に複合させることで、光によりスピン配向を可逆的に操るこができる外部刺激応答性磁性ナノ材料の開発を目的とし、平成24年度には、1.チミン誘導体を配位した金ナノ粒子の合成法の確立および、2.光照射による組織化制御を実施した。 1.チミン誘導体配位金ナノ粒子の合成法の確立:保護剤として炭素数8~12のアルキルチオールを用い粒子径が2.2~3.2 nmの金ナノ粒子を調製し、配位子交換によりチミン誘導体を導入した。粒子径が2.6 nmの金ナノ粒子、保護剤にドデカンチオールを用いた場合、チミン誘導体の導入量が分子数レベルで制御可能であることを明らかにした。 2.光照射による組織化制御:合成したチミン誘導体導入金ナノ粒子に、本補助金で購入した光反応装置を用いて紫外光を照射し、TEMにより組織化を評価した。1粒子あたりチミン誘導体が5分子導入された平均粒径2.6nmの金ナノ粒子をTHF溶媒中で270nmの光を照射した後、一次元配列した金ナノ粒子が多数認められた。これより局所的にチミン誘導体が導入されたことが推察された。光照射後の一次元組織体金ナノ粒子の粒子間距離をTEM像から算出したところ、チミン誘導体が二量化した際の粒子間距離の3.6nmに一致した。得られた組織体に220nmの光を照射しTEM観察した結果、組織化していた粒子の無秩序化が認められ、光により金ナノ粒子の組織化制御を達成した。光照射後の詳細なチミン誘導体の立体異性構造を評価するため、金ナノ粒子をヨウ素により溶解させ保護剤のみをNMRで評価しcys-syn型を多く含むことも明らかにしている。 光というクリーンなエネルギーで簡便に金ナノ粒子の組織化制御が可能であることを明らかにした本手法は、こうしたナノ粒子の組織化によるデバイスへの応用において意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.チミン誘導体が局部のみに配位した金ナノ粒子の合成法を確立した。ナノ粒子の局部にできる保護剤の隙間を利用して保護剤を導入するため、まず保護剤であるアルキルチオールの炭素数C=8~12について、サイズが2.2~3.2 nmのナノ粒子を調製し、配位子交換により局部にチミン誘導体が導入される最適条件を見出した。粒子径が2.6 nmの金ナノ粒子、保護剤がドデカンチオール、チミン誘導体を約5分子導入した場合において、金ナノ粒子が一次元配列した。これより、チミン誘導体が局部のみに配位した金ナノ粒子の合成法を達成した。 2.得られたナノ粒子の光応答性を明らかにした。270 nmの光照射した結果、一次元組織化体が多数認められた。得られた組織化体に220 nmの光を照射した結果、金ナノ粒子の無秩序化を確認し、十分な光応答を有することを明らかにした。さらに270 nmの光照射後の一次元組織体について、ヨウ素により金ナノ粒子を溶解させ保護剤のみをNMR測定しチミン誘導体の立体構造を評価したところcis-syn型を多く含むことを明らかにした。 以上、平成24年度にはチミン誘導体が局部のみに配位した金ナノ粒子の合成法を確立、およびチミン誘導体を導入した金ナノ粒子の光反応性を明らかにしたことから、進捗状況はおおむね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.光応答性保護剤を有するサイズの異なる金ナノ粒子の合成 金ナノ粒子のサイズが微小化するに従い磁化が強くなるという報告(T. Yamamoto, et. al. Phy. Rev.Lett., 2004)から、光応答性保護剤を有する金ナノ粒子の微小化を図る。サイズの異なる金ナノ粒子は、研究室で開発した方法で合成する。ここでは、より強い磁性が期待される1.5nmのオクタンチオール保護金ナノ粒子(Au55)を合成し、24年度と同様、炭素数が12のチミン誘導体を混合することで目的物を得る。金ナノ粒子のサイズにより表面の曲率が異なるため、アルキルチミンの導入量や部位が変わることが予想されるが、24年度の検討を踏まえて最適化を図る。 2.光応答性保護剤を有する銀ナノ粒子の合成 最近、平均粒子径2nmの銀および銅ナノ粒子においても磁性が確認されているので(J. Garitaonandia, et. al., Nano Lett., 2008)、多様な金属ナノ粒子の磁性素子化を図る。アルカンチオール保護銀ナノ粒子の合成は、AgNO3のNaBH4還元により調製し、Thy-(CH2)12-SHの導入は、金ナノ粒子の場合と同様な条件で最適化を行う。 3.光反応性微小金ナノ粒子の評価 ナノ粒子のサイズおよび有機保護剤の導入量、導入部位の評価は、24年度と同様、TEM 、NMR、AFMにより実施する。サイズの微小化により、TEMでの粒子の観察ができなくなる可能性があるが、一粒子あたりの分子量が20,000u程度と小さくなるため、質量分析法(MALDI TOF MS法)により粒子サイズを評価する。磁性および光反応性については、24年度と同様にして評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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