2012 Fiscal Year Research-status Report
高分子材料の構造制御手法を用いた前駆体構造の最適化による炭化ホウ素粉末の低温合成
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24750198
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
撹上 将規 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90567249)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 炭化ホウ素 / 前駆体構造 / ポリオール / 熱炭素還元 / 低温合成 |
Research Abstract |
本研究では、ホウ酸‐ポリオール縮合物から得られる前駆体の構造制御による炭化ホウ素(B4C)粉末の低温合成を目指す。平成24年度は化学的手法を用いた前駆体の分散形態制御として以下の2つについて検討し、B4C生成挙動の調査を行った。 1、分子ブレンドによる前駆体の分散形態変化 縮合物に低分子ポリオールを用いた系では、分子ブレンドが比較的容易である。そこでホウ酸‐グリセリン縮合物に酒石酸を添加し、前駆体の分散形態に与える影響を調査した。調製された多成分系縮合物に対して、B4C生成反応である熱炭素還元反応の反応量論比となるように大気中、500~700℃で熱分解することで前駆体を調製した。得られた前駆体における酸化ホウ素(B2O3)と炭素の分散形態は、酒石酸添加量の増加とともに細かく、均質なものになっていた。このことから、ヒドロキシル基とカルボキシル基を有する酒石酸はホウ素源と炭素源両方の分散の促進に効果的であるといえる。このように微細均質化された分散構造を有する前駆体を用いることで、焼成温度1250℃においてより短時間でのB4C生成が可能となった。 2、けん化度による前駆体の分散形態変化 ホウ酸とポリオールは、脱水縮合によりホウ酸エステル結合を形成することで前駆体におけるB2O3と炭素の高分散を可能にしている。ポリビニルアルコール(PVA)は、けん化度により分子鎖1本当たりのヒドロキシル基の数が変化する。そこで、重合度がほぼ同じでけん化度の異なるPVAを用いて縮合物を形成し、500~700℃で熱分解することで前駆体を調製した。得られた前駆体の分散形態を観察したところ、けん化度の低下とともに凝集炭素質の出現、次いで分散性の低下が確認された。この凝集炭素質の出現により生成粉末中へのフリーカーボンの残存が、また分散性の低下による反応性の低下が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究計画に記載した平成24年度実施予定の項目については予定通りに検討を実施し、論文を発表している。これらの検討により、本研究の特色である高分子材料の構造制御手法を用いた前駆体ナノ構造の制御が炭化ホウ素(B4C)粉末の低温合成において非常に有効な手法であることが明らかとなった。これらの手法を活用することで、B4C生成反応を支配している前駆体の構造因子の解明が期待される。 また、平成25年度実施予定である「物理的手法を用いた前駆体の配列緻密化」について、縮合物への応力印加装置は市販品を組み合わせる形での使用(平成24年度に購入)を考えていたが、予備実験を行ったところ効果的な応力印加の実施が困難であった。そこで、本研究の縮合物の紡糸に最適な押出紡糸装置を設計、試作した。現在、装置構成の最終的な調整を行っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書の研究計画に記載した平成25年度実施予定である「物理的手法を用いた前駆体の配列緻密化」について検討を実施する。物理的手法として用いる応力印加による配向処理方法として、平成24年度に予備的な検討を行った結果、押出紡糸法が最も効果的であることが分かった。また、予定していた市販品の装置の複合化ではなく、縮合物の押出紡糸に適した装置を新たに設計、製作することとした。現在、装置構成の最終的な調整を行っている。この装置を用いて、より分子配向が期待されるホウ酸‐ポリビニルアルコール(PVA)縮合物から前駆体の分散形態制御について検討を行う。さらに、得られた前駆体を用いて炭化ホウ素(B4C)生成挙動との相関を調査する。 平成24および25年度の成果を総括することで、異なるナノ構造を有する前駆体とB4C生成挙動の相関を明らかにし、B4C生成反応における前駆体の構造因子を理解する。さらに、前駆体構造の最適化によるB4C粉末の低温合成へのアプローチを示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に計上していた設備備品費については、現在特注の押出紡糸装置を作製しており、平成25年度においてその費用に使用する。 消耗品費および旅費等については、交付申請書に沿った使用を予定している。
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