2012 Fiscal Year Research-status Report
無機層状半導体が形成する2次元層間に固定した酵素分子による高度光化学変換
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24750205
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鎌田 海 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90315284)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 固定化酵素 / 層状物質 / 酸化物半導体 / インターカレーション |
Research Abstract |
固相反応およびイオン交換反応により単層剥離した層状半導体(酸化物)コロイド溶液を得た。これに加水分解酵素あるいは酸化還元酵素を添加すると層状半導体の2次元層間に酵素分子が配列した複合体が生成した。この複合化プロセスは層状半導体単層と酵素分子の静電的相互作用により進行するため、反応溶液のpH調整により両者の表面電荷を適切に設定することが重要であった。さらに、メソポーラスシリカなどの従来の無機担体と比較して層状半導体は極めて高い単位重量当たりの酵素吸着容量を示した。 層状半導体が形成する2次元層間に固定した酸化還元酵素の活性を評価し、遊離酵素との比較検討を行った。その結果、層間酵素は遊離酵素に比べて活性低下(約40%減)が起こったが、実用上十分な酵素活性を維持していることが分かった。2次元層間から酵素を抽出した後にその活性を評価すると遊離酵素と同等であったため、複合化による酵素活性の低下は酵素の本質的な失活に基づくのではなく、層間という制限空間に固定化された酵素に対して基質の親和性が低下したためと考えられた。一方、層間酵素は遊離酵素と比べて優れた紫外線耐性を示すことが明らかとなった。これは、無機層が酵素変性を招く紫外線を遮蔽するためであった。 以上の結果、液相中での層状半導体の単層剥離および酵素分子を伴った再積層により無機層状半導体が作り出す2次元層間に酵素を固定化した新規な無機-バイオ複合体の合成が可能であることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
層状半導体層間に生体高分子触媒である酵素分子の固定化に成功した。さらに、層間酵素は実用的な酵素活性を保持していることを証明した。したがって、今後、酵素反応の光制御を行うための基盤となる材料創製に成功した点でおおむね研究は順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
合成した酸化還元酵素-無機層状半導体複合体を用い、芳香族化合物を基質とした酸化還元酵素反応の光制御の可能性を検討する。紫外光で励起可能な層状チタン酸を用い、複合体への励起光照射を行い酵素反応速度を定量評価する。励起光波長や複合体中の酵素含有量と反応速度の関連を調査し、最適な光酵素反応の条件を探索する。また、光反応の持続性向上を目的に可視光励起が可能な層状半導体の合成、酵素分子との複合化および酵素活性の光制御を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として酸化還元酵素、金属酸化物、マイクロピペットチップ、 マイクロプレートなどの薬品や消耗材の購入を予定している。また、国内外での学会における研究成果の発表旅費も計上する。さらに、所属機関内の共通分析機器の使用料への支出を予定している。
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Research Products
(5 results)