2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒドリド含有酸化物を基軸とした新規機能性材料の探索
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24750209
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
小林 玄器 神奈川大学, 工学部, 助手 (30609847)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 新エネルギー / 無機工業材料 / 先端機能デバイス / セラミックス |
Research Abstract |
優れたヒドリドイオン導電特性を持つ新規酸水素化物を見出すことを目的とし、K2NiF4型構造の固溶体La2-xSrxLiH1+xO3-x を合成した。その結果、全域に固溶域が存在することが明らかとなった。X線および中性子線による回折測定とリートベルト解析から、LaSrLiH2O2 (x = 1)は構造中のヒドリドがab面上に二次元規則配列していること、Sr2LiH3O (x = 2)はヒドリドが三次元的に分布していることが明らかになった。このヒドリドの含有量の増加と元素配列の変化により、イオン導電率は向上し、活性価エネルギーは低減した。合成が困難であった酸水素化物の物質探索において、物質中のヒドリド含有量と配列を一般的な探索手法である元素置換により制御できたことは、今後の酸水素化物を基本とした物質探索の可能性を広げる知見である。 さらなるイオン導電率の向上を目指し、x = 1とx = 2の組成を基にヒドリド欠損相La1-aSr1+aLiH2-aO2とヒドリド過剰相La1+bSr1-bH2+bO2, LaySr2-yLiH3+yOを合成した。X線回折から連続的な格子定数変化を観測し、K2NiF4型構造の酸水素化物が広い固溶域を有することが示唆された。ヒドリドの欠損または層間への過剰のヒドリドを導入することで、導電率は向上し、組成b = 0.4では現段階で最も高い導電率(1.4 x 10-4 S/cm, at 300℃)が得られた。 ヒドリド導電の検証実験として、La2LiHO3を固体電解質に用い、TiH2/La2LiHO3/Mgで構成される固体電池を作製し、起電力測定を行った。ヒドリドが導電し始める200℃を超えた温度域から電圧が観測され、250℃ではTiとMgの酸化還元電位の差に相当する0.75 V程度の起電力が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の検討によってK2NiF4型構造の酸水素化物が広く固溶域を有することが明らかとなり、これまで検討してきた物質系に多くの新物質が存在していることが示唆された。イオン導電率についても、現段階で10-4 S/cmを超える値が観測されており、実用レベルの10-3 S/cmの導電率を達成する可能性が見えてきた。また、ヒドリド導電現象の検証実験においても、正極から負極へのヒドリド導電を想定した起電力が得られていることから、現象を証明するための実験事実が揃いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの合成結果を基に、さらなる導電率の向上を目指した物質探索を行う。また、これまではBサイト位置を占有する元素をLiに固定した探索を行ってきたが、今年度は新たにK2NiF4型構造の酸フッ化物や酸塩化物で合成例のあるScやInがBサイトを占有する物質系を探索対象に加える。 高い導電率を有する物質については、温度可変の中性子回折測定とMEM分析からヒドリドの拡散経路などを明らかにする。 ヒドリド導電現象の検証実験については、ヒドリドが正・負極間を移動した証拠を得るため、定電流充放電測定後の正極と負極の電子や結晶構造の変化を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費は、合成装置の熱源以外の箇所を冷却するためのチラー、X線回折用の気密ホルダーなど、物質探索やX線構造解析を円滑に進めるための消耗品に主に充当する。また、残額は論文投稿など、研究成果のアウトプットに必要な経費に使用する。
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Research Products
(2 results)