2012 Fiscal Year Research-status Report
多孔性無機粒子の縫い込み型導入による高強度機能性ゲルの創製
Project/Area Number |
24750213
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三友 秀之 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (50564952)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゲル / 複合材料 / 縫い込み型 / 物性 |
Research Abstract |
ハイドロゲルは、医療や工業的な利用において有望な材料として注目されているが、従来のハイドロゲルは機械強度が低いためその用途は大きく制限されている。そこで本研究では、有機・無機複合化を応用したアプローチによってこの問題を解決することを目的としている。具体的には、ゲルの高分子編み目構造と多孔性無機粒子との構造的な複合化に着目し、無機粒子の細孔内へ高分子ネットワークが縫い込んだ形で複合化することで高強度ゲルが創製できることを明らかにする。さらには、多孔性無機粒子によりゲルのミクロ構造を制御し、さらなる高強度化や機能性を賦与することを目指している。 当該年度においては、多孔性無機粒子へ高分子鎖を縫い込ませる方法として、モノマーを細孔内に充填してから重合する方法の有用性の確認を行った。架橋構造を持たない直鎖高分子と多孔性無機粒子とを用い、遠心による分離と熱重量測定による解析を行い、上述のサンプル調製方法の有用性を確認した。また、多孔性無機粒子の導入により高強度化されたハイドロゲルにおいて、高分子鎖が多孔性無機粒子の細孔へと縫い込こまれていることを実証するため、直接観察することを目指しSEM-EDSおよび二次イオン質量分析法の原理を応用した同位体顕微鏡による観察を行った。数nmの細孔内に導入された高分子鎖を観察することは難しく、直接観察には未だ成功していないが、元素マッピングからの証明に取り組んでいる。 さらに、多孔性無機粒子の縫い込み型導入による高強度ハイドロゲルの創製への指針を得るため、様々な多孔性材料を用いてハイドロゲルを調製し、粒子サイズや孔径および形状の因子とハイドロゲルの高強度化との相関について検討を行った。その結果、1um程度もしくはそれ以下の粒子径の多孔性材料を用いると変形性をほとんど損なうことなく高強度化できることが明らかとなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究実施計画では、大きく分けて二つの課題を設定していた。ひとつは、多孔性無機粒子の導入によるハイドロゲルの高強度化メカニズムの解明を目的とした高分子鎖の多孔性無機粒子孔内への縫い込み構造を実証することであり、もう一つは効果的な有機無機複合高強度ハイドロゲル創製への指針を得ることであった。 ひとつめの課題については、架橋構造を持たない直鎖高分子と多孔性無機粒子とを用い、遠心による分離と熱重量測定による解析から、サンプル調製方法による違いを明らかにし、その有用性を確認するとともに、高分子鎖の縫い込み構造を間接的にではあるが支持する結果を得た。さらには、直接的な観察を行うため、二次イオン質量分析法(SIMS)の原理を応用した同位体顕微鏡による観察にも挑戦し、結果を得つつある。 また、様々な粒子径、孔径の多孔性粒子を導入したハイドロゲルを作製し、それらの機械強度を評価した。その結果を基に粒子の形状と高強度化度との相関について検討を行い、有機無機複合高強度ハイドロゲル創製への指針を得るというという目的については、いくつか結果が得られている。 上記の点から、総合的にはおおむね順調い進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、高分子鎖が多孔性無機粒子の細孔内へと縫い込んでいることの直接的な観察を行うため、同位体顕微鏡による観察を行う予定である。また、当初の計画通り、多孔性無機粒子の細孔内での重合により、合成高分子鎖に対して生体高分子のような規定された構造や階層性を導入することに挑戦する予定である。具体的には、螺旋状に貫通孔が存在するメソポーラスシリカを作製し、その孔内において高分子鎖を重合することでワイヤーロープ状に縒られた集合構造をもつ合成高分子鎖の形成に取り組み、それに基づく力学強度や機能性への効果について検討を進める予定である。 また、合成高分子材料における『高分子鎖の絡み合い』の効果については、これまでは制御ができないことから無視されてきたが、本手法により積極的に高分子鎖の絡み合いを導入することが可能となれば、『高分子鎖の絡み合い』の効果を検討することができるようになり、材料科学に貢献する成果になると期待できる。そのため、この点についても積極的に推進したいと考えている。 さらには、縫い込み型構造による高強度化に加え、多孔性無機粒子の細孔内の表面修飾により細孔内の環境を調整し、高分子鎖との相互作用を制御することで、さらなる高強度化や特徴的な力学挙動(形状記憶性など)の賦与について検討したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度未使用額は、平成25年度に実施する計画の内、多孔性シリカの合成試薬の購入費用に充てる。
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