2013 Fiscal Year Research-status Report
多孔性無機粒子の縫い込み型導入による高強度機能性ゲルの創製
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24750213
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三友 秀之 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (50564952)
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Keywords | ハイドロゲル / 金ナノ粒子 / 距離制御 / 表面増強ラマン散乱 |
Research Abstract |
本研究では、ソフト&ウェットな材料であるハイドロゲルの機能性材料としての利用を広げるため、材料としての強度の向上および新たな機能の賦与を目指して研究を進めている。本年度は、1つめとして、多孔性無機粒子の縫い込みによる高強度化を実証するための直接観察に取り組んだ。また、2つめとして、ハイドロゲルの特徴のひとつである膨潤―収縮による大きなサイズ変化に着目し、金属ナノ構造体の動的な構造変化とそれを利用した機能化に取り組んだ。合成したフッ素化リガンドで表面修飾した金ナノ粒子の分散液をガラス基板上に滴下し、自然乾燥させることで金ナノ粒子の自己組織化膜を作製した。このガラス基板上で重合を行うことでポリアクリル酸ゲルを作製し、丁寧に離型することで金ナノ粒子自己組織化膜が表面に固定化されたゲルを得た。このゲルを異なる濃度の塩化ナトリウム水溶液につけることでゲルの膨潤―収縮を制御すると、金ナノ粒子のプラズモン共鳴による吸収スペクトルがシフトすることが確認できた。この結果より、金ナノ粒子間距離を動的に変化にさせることができたと考えられる。金や銀などのナノ構造体は、その表面(とくに間隙)においてラマン散乱を増強できることが示されている。そこで、本手法により金の微細構造を動的に制御することで、表面増強ラマン散乱法を効果的に利用でき、タンパク質などの新たな高感度検出法に応用できることが期待されるため、検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、高分子鎖が多孔性無機粒子の孔に縫い込まれていることの実証に取り組んだが、決定的な結果は得られなかった。しかしながら、我々が開発してきたソフト&ウェットなゲルの表面に金の微細構造を転写する方法を応用することで、金ナノ粒子集積体の粒子間距離の動的な制御方法を開発することに成功した。この方法はこれまで難しかった動的な微細構造制御を可能にするため、様々な応用が期待できる。例えば、この手法を利用することでプラズモン共鳴を動的に制御可能になり、表面増強ラマン散乱法への応用など機能性材料としての展開が期待できると考えている。 上記の点から、部分的には遅れ気味な部分もあるが、機能化の部分で良好な成果がでていることから総合的にはおおむね順調と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、高分子鎖が多孔性無機粒子の細孔へと縫い込んでいることの直接的な証明のための実験を検討する予定である。さらには、多孔性無機粒子の細孔内での重合により、合成高分子鎖に対して生体高分子のような規定された構造や階層性を導入することに挑戦していく予定である。具体的には、螺旋状に貫通孔が存在するメソポーラスシリカを作製し、その孔内において高分子鎖を重合することでワイヤーロープ状に縒られた集合構造をもつ合成高分子鎖の形成に取り組み、それに基づく力学強度や機能性への効果について検討を進める予定である。 また、ハイドロゲルのサイズ変化による金ナノ粒子間距離の制御方法は、これまで難しかった微細構造の動的な制御を可能にするため、様々な応用が期待できる。そのため、積極的に検討を進めて行く予定であり、まずは表面増強ラマン散乱法へと応用することの有効性を検証していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度は、高分子鎖が多孔性無機粒子の細孔へと縫い込んでいることの直接的な証明について検討を行ったが、決定的な結果が得られず、次の段階である細孔の形状を応用した高分子材料の作製についての検討が十分進められなかったため、次年度使用額が生じた。 平成25年度未使用額は、平成26年度に実施する計画の内、多孔性シリカ粒子合成用試薬の購入費用に充てる。
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