2012 Fiscal Year Research-status Report
分子スピントロニクスデバイスにおける交流インピーダンス特性
Project/Area Number |
24760001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
海住 英生 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (70396323)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子スピントロニクス / 磁気抵抗効果 / 交流インピーダンス / 磁性薄膜 / 有機膜 |
Research Abstract |
分子スピントロニクス研究分野は、強磁性体/多層カーボンナノチューブ/強磁性体における磁気抵抗(MR)効果の発見を機に、近年大きな発展を遂げてきた。しかしながら、これまでの研究ではMR効果、すなわち、磁場による直流抵抗変化に関する報告が多く、磁気インピーダンス(MI)効果、すなわち、磁場による交流インピーダンス変化に関する研究報告例はほとんどなかった。そこで、本研究課題では、分子スピントロニクスデバイスにおいて、その交流インピーダンス特性を調べ、これによりスピン依存伝導現象に関する新たな知見を見出すことを目的とする。 本研究目標を達成するため、平成24年度は、様々な接合サイズを有する強磁性体/有機分子/強磁性体接合デバイスを作製し、その構造・磁気特性を調べることを目的とした。 マイクロメートルサイズの接合面積を有する接合デバイスの作製には、メタルマスク蒸着法、及び、スピンコーティング法を用いた。磁化状態観察にはマイクロ磁気光学カー効果(MOKE)法を用い、MR効果測定には直流4端子法を用いた。その結果、Ni75Fe25/Alq3/Co接合デバイスでは、77Kにおいて、磁化状態に対応して電気抵抗が変化し、正のMR効果が生じることがわかった。 ナノメートルサイズの接合面積を有する接合デバイスの作製には、磁性薄膜のエッジを利用したナノエッジ法を用いた。本ナノエッジ法は、その作製手法自体、研究開発途中であるため、本年度は、その電極材料であるポリエチレンナフタレート(PEN)有機膜上の磁性薄膜について検討した。その結果、Co/PENでは、Co薄膜の膜厚が5nm付近で保磁力、及び、角型比が最大ピーク値を示すことがわかった。本研究結果より、本提案のナノ接合デバイスの電極材料にはCo/PENが有望であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、マイクロメートルサイズの接合面積を有するNi75Fe25/Alq3/Co接合デバイスに関しては、その作製が可能となり、これにより正のMR効果を観測することに成功した。また、ナノメートルサイズの接合面積を有する接合デバイスに関しては、構造・磁化状態の観点から、その電極材料としてCo/PENが有望であることが明らかになった。これらの結果は平成24年度の研究実施計画に従って得られた研究成果であり、これにより平成25年度の研究内容を予定通り遂行できるものと考えられる。このような事由から本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、ナノメートルサイズの接合面積を有する強磁性体/有機分子/強磁性体接合デバイスの作製を引き続き行うと同時に、本接合デバイスの交流インピーダンス特性を調べるため、その測定システムを構築する。 ナノメートルサイズの接合面積を有する接合デバイスの作製には、磁性薄膜のエッジを利用したナノエッジ法を用いる。この手法では、磁性薄膜のエッジとエッジを互いに直交させ、その間に有機分子を挟むため、磁性薄膜のエッジ面評価が重要な検討事項となる。エッジ面平滑化処理には、化学機械研磨(CMP)法を用いる。エッジ面評価には、同時電流測定装置搭載の原子間力顕微鏡(AFM)を用いる。有機分子の成膜については、真空蒸着法とスピンコーティング法の2種類の手法を検討する。各層の膜厚測定には、AFMとダイオード励起型固体(DPSS)レーザーによる透過光強度測定システムを用いる。磁性薄膜の磁化状態観察については、マイクロMOKE装置を用いる。表面状態観察については、上述と同様のAFMを用いる。以上により、構造・磁化状態の観点から十分最適化したナノメートルサイズの接合面積を有する強磁性体/有機分子/強磁性体接合デバイスを作製する。 交流インピーダンス特性の測定システムの構築には、LCRメーターを用いた交流4端子法を採用する。本測定システムには、外部磁場挿引、環境温度制御、直流バイアス重畳システムも装備し、これにより、インピーダンスの周波数特性、磁気インピーダンス効果、及び、それらの温度特性に関する測定を実現可能にする。本システムの自動化にはLabVIEWプログラムを用い、研究遂行の効率化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の節減の結果生じた使用残額については、平成25年度に成果発表のための旅費に使用する。
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Research Products
(18 results)