2013 Fiscal Year Research-status Report
分子スピントロニクスデバイスにおける交流インピーダンス特性
Project/Area Number |
24760001
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
海住 英生 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (70396323)
|
Keywords | 分子スピントロニクス / 磁気抵抗効果 / 交流インピーダンス / 磁性薄膜 / ナノスケール接合 |
Research Abstract |
本研究課題では、全期間を通して、ナノメートルサイズからマイクロメートルサイズに及ぶ様々な接合サイズを有する強磁性体/分子/強磁性体接合を作製し、その交流インピーダンス特性を調べることを目的とする。 本研究目標を達成するため、本年度はナノメートルサイズの接合面積を有する接合デバイスの作製について検討した。作製には磁性薄膜のエッジを利用したナノエッジ法を用いた。本ナノエッジ法は、その作製手法自体、研究開発途中であるため、本年度は、その電極作製について検討した。本年度提案した電極作製方法を以下に示す。初めに、電子ビーム(EB)蒸着法を用いて低融点ガラス上にコバルト薄膜を成膜した。次に、スパッタ法を用いてコバルト薄膜の両端に金薄膜を成膜した。そして、作製した試料のコバルト薄膜面上に低融点ガラスを高温でプレスし接着した。このときプレス温度は屈伏点程度とし、プレス環境は窒素雰囲気中とした。最後に、化学機械研磨(CMP)法を用いてコバルト薄膜のエッジを研磨した。 走査型電子顕微鏡(SEM)によりコバルト薄膜のエッジ面を観察した結果、数10nmのエッジ幅を有するコバルトエッジを観察することに成功した。また、原子間力顕微鏡(AFM)により同面の表面状態を観察した結果、0.3-1.0nm程度の表面粗さを有する平坦なエッジ面を形成することに成功した。さらに、直流2端子法によりコバルト電極の抵抗を調べた結果、数10-100Ω程度の低い抵抗値を示すことがわかった。これにより、ナノメートルサイズの接合面積を有する接合デバイスの交流インピーダンスを調べる際、電極のインピーンダンスを最大限に抑えることができ、より厳密な測定結果が得られる。以上より、本ナノエッジ法、並びに、本材料系は本研究目標を達成するための要素技術・材料として極めて有効であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、マイクロメートルサイズの接合面積を有するニッケル-鉄合金/アルミニウム錯体/コバルト接合デバイスに関しては、その作製が可能となり、これにより正の磁気抵抗(MR)効果の観測に成功している。また、ナノメートルサイズの接合面積を有する接合デバイスに関しては、構造・電気的特性の観点から、①作製手法としてナノエッジ法を用いること、②電極材料としてコバルト/低融点ガラス系を用いることが極めて有効であることが明らかになっている。これらの結果は平成24・25年度の研究実施計画に従って得られた研究成果であり、これにより平成26年度の研究内容を予定通り遂行できるものと考えられる。このような事由から本研究は順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、ナノメートルサイズの接合面積を有する強磁性体/分子/強磁性体接合デバイスを作製し、本接合デバイスの交流インピーダンス特性を調べる。 ナノメートルサイズの接合面積を有する接合デバイスの作製には、磁性薄膜のエッジを利用したナノエッジ法を用いる。磁性薄膜のエッジ間に挟む分子の成膜については、真空蒸着法とスピンコーティング法の2種類の手法を検討する。分子の表面状態観察、及び、構造分析については、原子間力顕微鏡(AFM)、及び、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いる。磁性薄膜の磁気特性評価には集光型磁気光学カー効果(MOKE)法、及び、磁気力顕微鏡(MFM)を用いる。以上により、構造・磁化状態の観点から十分最適化したナノメートルサイズの接合面積を有する強磁性体/分子/強磁性体接合デバイスを作製する。 交流インピーダンス特性の測定には、LCRメーターを用いた交流4端子法を用いる。本測定システムでは、インピーダンス測定のみならず、外部磁場挿引、環境温度制御、直流バイアス重畳システムも装備し、これにより、インピーダンスの周波数特性、磁気インピーダンス効果、及び、それらの温度特性に関する測定を可能にさせる。本システムの自動化にはLabVIEWプログラムを用い、研究遂行の効率化を図る。本測定システムを用いて、強磁性体/分子/強磁性体接合デバイスの交流インピーダンス特性を調べ、本研究課題の目標を達成する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の節減を行ったため、次年度使用額が生じた。 経費の節減の結果生じた使用残額については、平成26年度に成果発表のための旅費に使用する。
|
Research Products
(16 results)