2012 Fiscal Year Research-status Report
近赤外広帯域ガラス蛍光体の原子レベルミクロ構造の制御と高発光効率化
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24760008
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渕 真悟 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60432241)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ガラス蛍光体 / EXAFS / XRD / 発光効率 / 周辺局所構造 / 中距離構造 |
Research Abstract |
平成24年度は、「修飾酸化物等を系統的に変化させたSm3+添加ガラス蛍光体を作製し、発光効率を測定する」、「広域X線吸収微細構造(EXAFS)測定の実験条件を明らかにする」ことを、主目的に研究を進めた。 まず、ガラス蛍光体の作製では、ガラス形成酸化物をB2O3とし、修飾酸化物をBi2O3、ZnO、CaOと変化させた試料、及び修飾酸化物をBi2O3とし、ガラス形成酸化物をB2O3とP2O5と変化させた試料を作製した。これらの発光特性を測定したところ、スペクトル形状に大きな変化はなく、発光効率のみ変化することがわかった。また、Bi2O3-B2O3ガラスが最も高い発光効率を示した。 次に、ガラス形成酸化物をB2O3とし、修飾酸化物をBi2O3、ZnO、CaOと変化させた試料に対して、透過法と蛍光法でEXAFS測定をおこなった。また、測定時間がスペクトルに与える影響を調査した。その結果、蛍光法で、1試料5時間程度の測定で、全ての試料に対して解析可能なスペクトルを取得できることを明らかにした。解析の結果、Sm3+の第1近接原子は酸素で、その距離はどの試料でもほぼ同じであった。また、Bに対してBiはSm3+に近接していることを明らかにした。 さらに、本年度はX線回折(XRD)測定についても試行的な実験をおこなった。測定は、ガラス形成酸化物をB2O3とし修飾酸化物をBi2O3、ZnO、CaOと変化させた試料に対して行った。その結果、Bi2O3-B2O3ガラスには、2原子間距離よりも長い中距離で何らかの構造を有していることが明らかとなった。 このように、ガラス構造と希土類イオン周辺局所構造と発光効率が密接に関係していることの手がかりを得ることができ、ガラス蛍光体の物性理解や設計手法確立に向けて重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、希土類イオン周辺局所構造及びガラス骨格構造と発光効率の相関関係を明らかにし、近赤外ガラス蛍光体の高発光効率化を目指すことを目的にしている。 平成24年度の研究によって、修飾酸化物やガラス形成酸化物を変化させた試料の作製と発光効率の測定をおこない、EXAFS測定やXRD測定で比較可能な試料を得た。また、これらの試料に対するEXAFS測定やXRD測定も実施し、解析可能なスペクトルを得た。さらに、これらの測定データを解析することにより、発光効率、周辺局所構造、ガラスの中距離構造の間に、何らかの相関関係があることがわかった。 このように、本年度は、本研究の目的の第1段階である、「サンプルの作製」、「EXAFS、XRD測定とデータ解析」をおこなうことができ、今後、何に注目すべきかの指針を得ることができた。このように、本研究は概ね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、これまでに作製したサンプル及び今後作製するサンプル(例えば、高い発光効率が得られたBi2O3-B2O3系ガラスの母体組成変化)について、「EXAFS測定」及び「XRD測定」をおこなう。 EXAFS測定では、平成24年度に得られた実験条件を基に、ガラス形成酸化物の構成元素であるBと、修飾酸化物であるBi(場合によっては、CaやZn等も)の距離と配位数に注目し、何が発光効率向上に寄与するのか明らかにする。 XRD測定では、平成24年度の実験条件を用い、ガラスの中距離構造の変化に注目し、解析を進める。可能であれば、逆モンテカルロシミュレーションを行い、具体的な構造解析にも着手したい。 そして、ガラス構造の何が、発光効率向上に寄与するのか明らかにし、高発光効率を実現可能な希土類イオン周辺局所構造とガラス骨格構造を推定し、Sm3+添加ガラス蛍光体の高発光効率化を実現する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)