2012 Fiscal Year Research-status Report
原料溶液の高純度化と結晶配向制御による酸化物超伝導膜の電流輸送特性の高度化
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24760013
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺西 亮 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70415941)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超伝導材料 / 銅酸化物 / 薄膜 / 臨界電流密度 / 溶液塗布法 |
Research Abstract |
原料溶液にトリフルオロ酢酸塩(TFA)を用いた有機金属堆積法(MOD法)法にてYBa2Cu3O7-y(YBCO)を作製する場合、TFAを有機合成する際に水分や反応副生成物が不純物として原料溶液に混入し薄膜の特性を低下させる問題があった。本研究では、不純物、特に水の含有量を低減することによる原料の高純度化を目的として、本年度は精製過程における減圧度が原料溶液純度及び結晶化後の薄膜特性に及ぼす影響を調査した。 Y,Ba,Cu-酢酸塩を超純水中でTFAと反応させ、エバポレーターを用いて減圧下で精製し、原料溶液を得た。ここで、(1)大気圧から20hPaまで減圧精製(HDs)、(2)大気圧から200hPaまで減圧精製(LDs)、(3)大気圧から160hPaまで減圧の後保持(LDs-2)、(4)大気圧から160hPaまで減圧の後保持し更に20hPaまで減圧し保持(SDs)、の4条件にて原料を作製し、それぞれLaAlO3基板上に塗布した後、一定条件にて結晶化しYBCO膜を得た。 YBCO膜のc軸結晶配向性や臨界電流密度は上記減圧精製プロセスに大きく依存することが明らかとなり、高い減圧度にて長時間精製するに従い結晶配向性が向上し、電流特性が高性能化した。FT-IRにて原料溶液中の水含有量を調査した結果、精製を進めるに従い含有量は低下し、HDsでは5.5wt%、LDsでは2.8wt%、SDsでは1.9wt%となった。このことから、YBCO膜の高特性化の要因は、原料溶液の高純度化の効果が大きいことが示された。特に、SDsのように溶媒であるメタノールの35℃における蒸気圧200hPaより低圧で減圧することにより、メタノールとともに多くの水分を共沸により除去した後、さらに水の蒸気圧以下である20hPaまで段階的に減圧精製することにより、不純物である水を効果的に排除することができたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気炉など、当初予定していた実験装置の立ち上げ及び条件出しの工程が順調に進行し、また、本格的な実験に入った以降も、例えば原料溶液の精製に関しては参考文献を効果的に利用することによって、実験が効果的かつ順調に進められたことが大きな理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、実用線材基板上での成膜と原料溶液の改善を行う。具体的には、前年度の結果(単結晶基板上による超伝導膜作製)から得られた知見を基に、実用テープ基材上への成膜への展開する。膜の結晶化において新たな課題を抽出し、これまで培ってきた溶液法による結晶配向制御に関する知見を効果的に用いてそれら課題への対策を施し、下記の目標値を実現する。 「実用金属テープ上での成膜による課題抽出と問題解決により、5x106A/cm2級の電流輸送特性を実現する」
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度にて基本的な実験環境が整っていることから、平成25年度は研究予算を主に消耗品に当てる計画でいる。具体的には、試薬(有機原料、溶媒)、実験消耗品(ゴム手袋、ろ紙、紙タオル等)、ガラス器具(ビーカー等)、単結晶基板(MgO、LaAlO3)、 成膜用ガス(Ar、O2)などである。
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