2012 Fiscal Year Research-status Report
アルミニウム砒素中の窒素不純物準位を用いた可視域量子光源に関する研究
Project/Area Number |
24760015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
定 昌史 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (20400020)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | AlAs / 等電子中心 / 単一光子発生 |
Research Abstract |
本研究ではGaAs基板と整合した可視域量子光源の実現に向けて、AlAs中の窒素不純物準位を用いた可視域における単一光子発生の実証を目的とする。この目的のために、次の3段階で研究を遂行していく。①まず窒素不純物をドーピングしたAlAs(AlAs:N)を作製しその光学特性を明らかにする。②つぎに,単一不純物準位からの発光について光子相関を測定し,単一光子発生を実証する。③発展として,母材をAlGaAsとすることで発光波長を可視~近赤外にわたって制御する。 本年度はこのうち①AlAs:Nの作製と②単一光子発生の観測を達成した。まず、窒素ラジカル源を備えた分子線エピタキシ装置を用いてNドープAlAsを成長した。一様ドープ、デルタドープいずれも窒素流量やプラズマパワーによりドープ濃度の精密制御が可能である。つぎに、N面密度6×1011 cm-2のデルタドープ試料を中心に光学特性の評価を行った。その結果、AlAsのX点バンドギャップ直下2.1 eV付近にN等電子中心由来のシャープな発光が観測された。これらのピークの蛍光強度はN濃度の2乗に比例することから、NNペアに束縛された励起子発光線と考えられる。単一の発光サイトについて偏光特性を測定したところ、2.165 eVピークは<110>方向に強く偏光しており、[110]あるいは[220]型のペア配置に束縛された励起子発光と考えられる。さらに、単一の2.165 eV発光サイトについて同時計数計測を行い、単一光子発生の観測に成功した。 2.165 eV (572 nm)域はこれまで単一光子発生報告のない可視域ギャップ帯に相当し、本研究の成果は汎用性の高いGaAs基板と整合する実用的な半導体量子光源の可能性を拓くものであるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では24年度で試料作製ならびに光学特性評価を行い、25年度で単一光子発生を確認する予定であった。これに対し24年度で単一光子発生の実証まで達成しており。当初の計画以上に進展している。 これは、これまで培った結晶成長技術を十分に活かして試料の作製を進めたこと、ならびに高度な光学実験や実験結果の議論に関して、申請者の所属するユニット内で密接な協力体制が築けたことによると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究でAlAs中のN不純物準位を用いた570nmでの単一光子発生に成功した。今後は母材をAlGaAsとすることで可視~近赤外(800nm)にわたる発光波長帯の制御をはかる。 すでに様々な組成のAlGaAsを用いた窒素ドープ試料は作製しており、25年度はこれら試料の光学特性評価と実験データの解析が主となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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