2013 Fiscal Year Research-status Report
グラフェンのモアレ様ポテンシャル分布を利用する有機半導体薄膜の制御
Project/Area Number |
24760023
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山田 洋一 筑波大学, 数理物質系, 講師 (20435598)
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Keywords | graphene / モアレ |
Research Abstract |
本研究では、金属基板上のgrapheneに現れるモアレ様ポテンシャル分布を利用した有機分子膜のパターニングを目指す。本年度では、前年度に引き続き、金属表面とgrapheneとの相互作用に関する次の3種類の基礎研究をおこなった。 (1)希ガス原子線散乱によるgrapheneの振動状態計測:昨年度に引き続き、各種grapheneにおけるHe及びAr原子線散乱を行い、その振動状態を詳細に解析した。この結果、基板に依存して、grapheneからの原子線散乱スペクトルは顕著に異なり、これはgrapheneの振動状態の違いに起因することがわかった。これは、投射物の反射による対象の硬さの評価という直感的な理解が可能な現象である。さらに、散乱スペクトルの詳細な解析からは、graphene-基板間相互作用の面内分布の情報を抽出することが出来た。これに関する論文を現在投稿中である。 (2)ナノグラフェンと基板との相互作用:grapheneと基板の相互作用評価の基礎として、coronene等のナノグラフェン分子と基板との相互作用を光電子分光や走査トンネル顕微鏡により検討した。ここでは、多くの場合ナノグラフェン分子と基板との相互作用は大きくないことが示された。この結果は、すぐれた化学反応計測のモデル系の構築に繋がった。すなわち、基板と弱く相互作用する単分子層は、よく定義された構造と、自由分子に近い電子状態を併せ持つ。このため、STMによる分子レベルの構造を観察しながら、分子の純粋に近い化学反応を追跡することが出来る。本年度はこの系を用いて、分子と金属元素の反応過程の研究を行い、分子への金属ドープの基礎的研究を展開で来た。これに関する論文を現在投稿中である。 (3)タンパク質材料のgraphene化:さらなる派生課題として、金属基板上でのタンパク分子のgraphene化研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、金属基板上のgrapheneに現れるモアレ様ポテンシャル分布を利用した有機分子膜のパターニングを目指す。モアレ様ポテンシャル分布は金属基板とgrapheneとの相互作用の結果生じるものであり、小の相互作用の基礎的検討は重要である。本年度まで、これに関する基礎的評価を十分に行うことが出来た。これは次年度におけるモアレ様ポテンシャル分布の制御とその利用の研究の基盤となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画では、金属表面の構造を利用したgrapheneのモアレ様ポテンシャル分布の制御とその利用を目指す。これまでの研究により、この制御のためには、grapheneと基板表面間に、強い間相互作用と、顕著な格子不整合が必要であることがわかってきた。これを念頭に置き、モアレ様ポテンシャル分布をさらに大きく制御するために、特異な対称性を有する半導体表面の利用も視野に入れる。
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Research Products
(13 results)