2012 Fiscal Year Research-status Report
波束ダイナミクス法を用いた有機半導体でのポーラロン輸送機構の理論研究
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24760024
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石井 宏幸 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00585127)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機半導体 / シミュレーション / ポーラロン / ホール効果 |
Research Abstract |
有機半導体は、フレキシブルで大面積塗布可能な次世代デバイス材料として注目されているが、その伝導機構は明らかになっていない。本研究の目的は、独自に開発している電子伝導計算理論「時間依存波束拡散法」に新たにポーラロン効果を取り入れる拡張を行い、この計算法を用いて有機半導体で重要と考えられるポーラロン伝導機構を原子・分子スケールから解析・解明することである。 柔軟な有機半導体の格子歪みを分子動力学計算に基づいて計算し、これを電子波束の量子論に基づく時間発展計算と毎時間ステップ連立させて解くことにより、動的ポーラロン効果を取り込むことに成功した。特に、従来の理論ではHolstein型とPeierls型のポーラロンを同時に取り扱うことは困難だったが、これを初めて可能にすることに成功した。この計算方法を用いて、移動度の温度依存性におけるHolstein型とPeierls型ポーラロン生成の寄与などを明らかにした。 上記のような移動度の温度依存性の解明は、有機半導体の伝導機構を知る手段の一つである。もう一つの手段として、有機半導体におけるホール効果がある。すでに実験では複数の報告が挙がっているが、理論的に解析した研究はまだ無いために、その理解は進んでいない。そこで「時間依存波束拡散法」の枠組みの中で、ホール効果を計算できるように、新たな数値計算手法を開発している。これが確立すれば、様々な有機半導体に適用して、伝導物性をより深く理解できることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な研究項目は、(1)格子歪みを伴うポーラロン伝導機構の解明、(2)ホール効果からの伝導機構の解明、である。 (1)に関しては、ポーラロンを取り入れた計算法の開発を無事に終え、現在、これを用いて代表的なペンタセンやルブレン単結晶の伝導機構を解析している。また、(2)に関しては、ホール効果を計算するための数値計算手法開発の主要な部分は既に終えていて、現在、計算精度や細かなチェックなどを行っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
ペンタセンやルブレンなどの伝導機構の解析は、順調に進行中なので、さらに扱う材料を増やし(TIPS-ペンタセンやDNTTなど)、各々の材料の比較・検討を行うことで、多様な有機材料の伝導物性を統一的に理解できるように研究を進めていく。 有機半導体のホール効果に関しては、ホール効果の計算手法を速やかに確立させることを目指す。ホール効果を実験結果と比較・検討することで、より深く伝導物性を理解、解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)