2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24760026
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河内 泰三 東京大学, 生産技術研究所, 技術専門職員 (80401280)
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Keywords | 界面磁性 |
Research Abstract |
一般的に磁性薄膜の磁気異方性は、表面・界面・バルクの磁気異方性の競合によって等方的な磁化となると解釈されるが、本来、表面・界面磁性とは局在状態であり、同一磁性膜中においても、バルク中とは異なる磁気異方性を呈すると予想される。今回は、鉄系磁性膜の中でも、鉄薄膜の面内に平行か反平行の磁場を加えた時の磁気抵抗比が大きくなる巨大磁気抵抗効果が起きる系としてよく知られている酸化マグネシウム上の鉄薄膜の系を考える。 酸化マグネシウムMgO(100)単結晶基板上にエピタキシャル成長した鉄薄膜に着目した。鉄薄膜成膜時に57Fe安定同位体を薄膜の任意の深さにプローブとして挿入し、放射光励起57Fe核共鳴散乱法を用いて、Fe(100)/MgO(100) の界面と、Fe膜中の磁化方向を調べた。測定の結果、鉄膜中では面内磁化していたことに対して、界面において鉄が面直磁化していることが判明し、この系では、界面で面直磁化が膜中に向かって面内に向くという界面磁気キャンティング現象が起きていることが分かった。 一方、酸化アルミニウムAl2O3(0001)単結晶基板上にエピタキシャル成長した鉄薄膜について同様の測定を行った結果、Fe(110)/Al2O3(0001)界面及び鉄膜中共に、面内に磁化していることが分かり、界面磁気キャンティングが起きるか起きないかは系に依存していることが判明した。 強磁性鉄薄膜で、膜中は同じ面内磁化を示していても、鉄-基板界面においては磁気キャンティングを起こす系とそうでない系に分かれるという実験結果と、磁気キャンティングを起こしているFe/MgO(100)の系の方が、磁気抵抗効果が大きいという事実を鑑みると、薄膜の磁気異方性を議論する上で、表面・界面磁気異方性は局在条件として考慮に入れる必要があることが本研究において、はじめて解明された。
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