2013 Fiscal Year Annual Research Report
界面相互作用に基づくグラフェンへのスピン注入過程制御の研究
Project/Area Number |
24760033
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
大伴 真名歩 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 博士研究員 (20610299)
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Keywords | 六方晶窒化ホウ素 / グラフェン / スピントロニクス / スピン偏極ヘリウム脱励起分光法 / 磁性 / 準安定原子 |
Research Abstract |
本研究では極薄の六方晶窒化ホウ素(h-BN)を、グラフェン・スピントロニクスのトンネルバリア材料として用いることを視野に入れて、スピン注入効率に影響しうるh-BNと磁性金属界面の電子・スピン状態の評価を進めている。これまでに単層h-BN/Ni(111)界面で、NiとNi上に配位したN原子の間に弱い軌道混成が存在し、Nにh-BN π*軌道由来のスピン偏極ギャップ内準位(Niの多数スピンの向きに偏極)が誘起されていることを、再表面敏感なスピン偏極ヘリウム脱励起分光法(SPMDS)を用いて明らかにした。このようなスピン偏極界面準位は、h-BNトンネル磁気抵抗素子の磁気抵抗比とその符号に影響しうるものである。 さらにNi(111)上で単層h-BNを水素化したところ、このスピン偏極界面準位の状態密度が大きく減少し、Niの少数スピンの向きに偏極した新たな準位が出現することが明らかになった。この水素化h-BNのスピン状態変化の機構をさらに明らかにするため、水素化の際の構造の変化を、X線定在波法(XSW)と低速電子線回折法(LEED)を用いて調べた。その結果水素が吸着した際にホウ素の原子位置が変化する一方で、窒素は変位しないことが分かった。このことはホウ素原子が水素化したことを示唆する。ホウ素が水素化することは、h-BN π*軌道の状態密度が大きく減少し、ギャップ内準位の状態密度も減少することを意味する。この際に窒素上にp軌道由来の電子が局在化し、不対電子スピンとなっていると考えられる。 またさらにh-BN/Co(0001)系のSPMDS測定も併せて行い、h-BN/Co系でも界面軌道相互作用による誘起スピン偏極準位が存在することを確認した。実デバイスではCoを磁性電極として採用するケースも多く、デバイス設計の指針となることが期待される。
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