2012 Fiscal Year Research-status Report
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24760041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
居波 渉 静岡大学, 若手グローバル研究リーダー拠点, 特任助教 (30542815)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カソードルミネッセンス / FDTD法 / モンテカルロ法 |
Research Abstract |
本年度は、モンテカルロ法とFDTD法を組み合わせたプログラムを開発した。電子は、蛍光体薄膜に入射する。そして、蛍光体薄膜に入射した電子は散乱する。電子は蛍光体薄膜中を伝搬する際にエネルギーを失う。そのエネルギーによって、光が励起される。蛍光体薄膜内の電子の軌道は、モンテカルロシミュレーションによって計算した。モンテカルロシミュレーションでは、単一散乱モデルを用いた。単一散乱モデルでは、蛍光体薄膜中を伝搬する間に、電子は弾性散乱を起こし、電子のエネルギーは連続的に失うとする。次に、蛍光薄膜内での光の強度分布の解析方法について述べる。電子線による発光は、双極子によるものとした。この双極子の位置は、電子の衝突間の長さの中点とした。発光強度は、電子が各ステップ長さを伝搬して失ったエネルギーから決定した。それぞれ1つの電子双極子が形成する強度分布をFDTD法で求める。そして、それらの双極子の発光により形成された強度分布をすべて足し合わせる。この方法により、蛍光体薄膜中とその周囲の光強度分布を求めた。 開発した計算手法を用いて蛍光薄膜内外部に形成される電場の強度分布を求めた。蛍光体薄膜は窒化シリコンである。その厚さは50nmである。入射電子の加速電圧は5kVとした。円形の光スポットが形成されることが分かった。その光スポットの半値全幅は、26.4nmであった。電子線が入射している蛍光体薄膜の上部では、光強度が高いことが分かった。そして、蛍光体下部に進むにしたがって、光強度が低くなっている。蛍光体上部では、入射電子線はあまり散乱しないため、多くの双極子が高密度に励起される。そのため、光強度が高い。しかし、蛍光体下部に進むと、電子線は散乱し拡がるため、蛍光体下部に進むにしたがって、光強度が低くなる。電子線を蛍光薄膜に照射することで、光の回折限界以下の光スポットが発生することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モンテカルロ法とFDTD法を組み合わせたプログラムを開発することができた。開発したプログラムを用いて、蛍光薄膜に電子線を照射することで、ナノ光源を生成できることが分かった。さらに、ナノ光源のサイズと強度の加速電圧依存性や蛍光薄膜の膜厚依存性を検討した。蛍光体薄膜の厚さが大きくなると、形成される光スポットのサイズが大きくなることが分かった。これは、膜厚が大きくなるにつれて、電子線の散乱が大きくなるためである。また、膜厚が大きくなると、光スポットのピーク強度は低くなっていく。膜厚が大きくなると、電子線は蛍光薄膜中ですべてのエネルギーを失い、蛍光薄膜裏面まで伝搬しなくなるからである。蛍光薄膜の上部で発生した光は、蛍光薄膜の裏面まで伝搬すると、拡がってしまう。そのため、蛍光薄膜の上部で発生した光は、光スポットの形成にはあまり寄与しない。蛍光薄膜の裏面近傍で発生した光が、光スポットの形成において支配的になる。したがって、蛍光薄膜の膜厚が大きくなると、蛍光体薄膜裏面近傍での発光量が少なくなり、光スポットのピーク強度は低くなる。また、蛍光薄膜の膜厚が大きいと、電子が大きく散乱し、励起される双極子の分布が拡がってしまい、光スポットのピーク強度は弱くなる。 また、実験的に電子線の透過率の測定を行い、計算結果とおおむね一致することが分かった。低加速の電子の透過率の実験値と計算値の違いが大きい。今後、計算モデルを検討する必要がある。さらに、Euを含有するイットリウムオキサイド蛍光体を異なる膜厚で作製することに成功している。今後、作製した蛍光薄膜を電子線で励起し、その発光の強度を測定する。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したイットリウムオキサイド蛍光体を電子線で照射し、その発光強度の測定を行う。そして、その結果と計算結果を比較検討し、解析手法の評価、改良を行う。特に電子線により励起された電気双極子の位置について検討する。電気双極子の位置は、電子の散乱点から散乱点の中点として計算した。しかし、入射電子線の加速電圧が高くなると、散乱点から散乱点の距離が長くなる。この距離が膜厚に対して長くなると、その中点が蛍光体薄膜の外になる。そのため、入射電子線の加速電圧が高く蛍光体薄膜が薄い場合、計算精度が低下することが予想される。そこで、発光位置を中点だけでなく、他の位置にも設けることを検討し、精度向上を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
蛍光体の発光強度の測定を行うための装置を開発する。本装置は、電子顕微鏡の中の非常に狭い空間に設置する必要がある。また、実験を効率的に行うため、走査型電子顕微鏡の試料交換システムのロードロックに対応する。そのために、走査型電子顕微鏡の試料ホルダーに搭載可能なコンパクトな放物面ミラーを作製する。放物面ミラーで集光した光は、走査型電子顕微鏡のポートに設置したビューイングポートから外部に取り出す。そして、その光を光検出器で強度を測定する。
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