2012 Fiscal Year Research-status Report
高強度テラヘルツ光によるコロイド半導体ナノ粒子の発光明滅現象の解明と制御
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24760042
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣理 英基 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (00512469)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | テラヘルツ非線形光学 / 半導体量子ドット |
Research Abstract |
半導体量子ドットにおける光励起キャリアは、ナノスケールの空間に閉じ込められるために強いクーロン相互作用が働き、バルクや他の低次元系半導体と比べて多体効果が顕著に現れる。量子ドットを光励起すると、発光する状態(オン状態)と発光しない状態(オフ状態)の間をランダムに転移する明滅現象が観測される。この現象には多励起子状態やチャージしたドットにおけるオージェ再結合といった多体効果、さらにはトラップ準位を介した非輻射緩和過程が関係していると考えられるが、そのメカニズムは未解明である。本年度は、これらの多体効果の影響を理解するために、明滅現象の励起光強度依存性を調べた。単一のコアシェル型量子ドット(CdSe/ZnS,コア径8nm)の発光強度の時間変化を調べた結果、高い励起光強度下(92W/cm^2)で測定した場合は、オン状態のおよそ半分の発光強度を有する中間状態が現れることがわかった。また、単一ドットの発光スペクトルを観測することによって、この中間状態の発光のピークエネルギーはオン状態よりも10 meV程度低エネルギー側にシフトしていることが観測された。このシフト量はトリオンの束縛エネルギーと同程度であり、光学的励起によるトリオン形成を示唆していることがわかった。特に、比較的コア径の大きな量子ドットでは、オージェ再結合が抑制され、中間状態が比較的高い発光強度を示すことがわかった。これによって、今回初めてON、OFF、中間状態のブリンキング現象を系統的に調べることができ、従来曖昧にされてきた中間状態とOFF状態の形成過程の違いを明確にすることができた(論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、高効率な発光素子・太陽電池材料さらには単一光子発生源への応用が期待される半導体量子ドットにおける発光明滅現象の解明および制御法の確立を目的としている。本年度は、単一量子ドットからの発光ブリンキング特性を調べる光学系を整備し、異なるコア径を持つ試料について測定を行った。そして単一のコアシェル型量子ドット(CdSe/ZnS,コア径8nm)の発光強度の時間変化を調べた結果、高い励起光強度下(92W/cm2)で測定した場合は、オン状態のおよそ半分の発光強度を有するトリオン状態が現れることがわかった。これは高密度励起状態において、多量に生成されたバイエキシトンがオージェ再結合を引き起こし、その結果コアに生成された電子と電子―正孔対によってトリオン(荷電励起子)が生成されたことを示唆している。本成果は、量子ドットにおける発光のブリンキング現象を解明する上で極めて重要であり、現在の研究の達成度は当初の予定通り進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、空間的な光パルス面制御による高強度テラヘルツ光発生法(10MV/cm以上の電場振幅)を開発し、発光明滅現象への照射効果を測定する。昨年度の研究成果によって、ブリンキング現象のテラヘルツ電場の照射効果の理解も進化することが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
単一発光のブリンキング現象を観測する装置とテラヘルツパルスの発生・照射装置を融合するための光学部品の購入に使用する予定である。
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