2013 Fiscal Year Annual Research Report
量子結合制御を基礎とした高効率非線形光学応答の理論
Project/Area Number |
24760046
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
余越 伸彦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90409681)
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Keywords | 非線形光学 / プラズモニクス |
Research Abstract |
平成25年度における研究において、ナノメートル程度の大きさの金属片を用いた金属アンテナや、半導体微細構造により作製された微小共振器を補助系と見立て、有機分子や量子ドットと光の非線形応答の効率を向上させる研究を行った。 まず補助系と分子・量子ドットからなる量子結合系を、比較的単純なモデルで近似を行い、その非線形光応答をいかにして大きくするかという研究を行った。その結果、通常はレーザー等の非常に高密度の光でのみ可能であると考えられてきた非線形励起を、単一光子レベルの非常に微弱な光で引き起こす手法を理論的に開発した。具体的には、補助系と分子の連成振動を系のパラメーターにより制御することで、補助系が光を効率系に捕集しつつも、そのエネルギーをほぼ全て分子に移行し、非線形励起を高効率に引き起こす状況を用意できることを明らかにした。また結合量子ドット等の系では、その一部を金属アンテナにより励起することで、本来は光励起できない暗状態の励起が可能となり、これもまた非線形励起を引き起こす新しい手法となることを確認した。一方、高強度の光により補助系を励起することで、分子におけるエネルギー上方変換と反転分布が両立する新しい発光機構を確認した。 また、より具体的なシステムを想定するための数値計算手法の開発を行なった。これまでシステムを微小領域に分割して、系全体の分極を計算する離散双極子法は多くの分野で成功を収めてきたが、その非線形励起への応用は非常に困難であった。そこで我々は離散双極子法と量子マスター方程式を連立させることにより、分子おける非線形励起を計算する手法を新たに開発した。この手法により、ナノメートル程度の金属球や三角錐の近くに配置した分子の非線形励起を計算することに成功した。
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