2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24760049
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
神原 大 静岡大学, 電子工学研究所, 特任准教授 (90452490)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | テラヘルツ分光 / DFT / 周期境界条件 / 有機分子 / アミノ酸 / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では様々な有機分子の高精度テラヘルツスペクトルを広帯域にわたって実験的に獲得し、得られたスペクトルをDFT (Density functional theory: 密度汎関数法) 計算によって求めた振動数・強度と比較することを通じ、有機分子のテラヘルツスペクトルの帰属法を確立することを目指した。 試料としてCoumarin-3-carboxylic acid (C3CA)などの小型有機分子やタンパク質の単位物質であるグリシンやアラニン、システイン等のアミノ酸分子を用い、高分解能テラヘルツ分光スペクトル測定とDFT計算を実施した。実験的に得られたテラヘルツスペクトルと理論的に求められた各種振動モードの振動数と強度は、いずれも非常に良い一致を示しており、今回用いた分子量:数十~数百程度の小型の有機分子のテラヘルツスペクトルは、本手法によって精度よく帰属可能であることが示された。 上述の帰属法を用いて以下のテラヘルツ分光研究を実施した。グリシンやアラニンの短いペプチドのテラヘルツスペクトルは鎖長の増加とともに平滑化することを示した。結果を理論的に求めた振動モードを比較し、鎖長の増加に伴う低振動モード密度の増加が、スペクトルの特徴を失わせる原因の一つであることを示した。一方、実験で観測されるピーク位置と理論計算で得られた振動数との間のずれを定量的に評価し、温度項と非調和性を経験的に取り入れることによって、測定温度においてさらに確度の高い振動数を予測する手法を報告した。また、上記のC3CAの付加環化反応や有機薬剤や生体分子の水和過程を追跡し、各種化学反応に伴う低振動モードの変化について、実験・理論の両面から議論することが可能であることを示した。このように本課題によって確立された帰属法は、派生する様々なテラヘルツ分光研究へと広がりを見せた。
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