2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24760052
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
戸田 雅也 東北大学, マイクロシステム融合研究開発センター, 助教 (40509890)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電子スピン共鳴 / ラジカル / カンチレバーセンサ / 高感度計測 |
Research Abstract |
本研究は,非破壊で物体のミクロな内部構造をイメージングできる技術として期待されている磁気共鳴力顕微鏡(MRFM)のための高感度プローブを開発する.例えば,高密度記録メディアの双安定分子の記録状態を評価したり,半導体プロセスの欠陥量を評価するなどに応用できるように,MRFMの計測対象に制限が少ない微粒子磁石が先端に付いたシリコンカンチレバーセンサの作製と評価を行った. 測定試料には,標準試料として酸化するとラジカルカチオンとなって安定的にラジカルが分子内で保持される試料(PVBPT,Poly-10-(4-vinylbenzyl)-10H-phenothiazine)を用いた.PVBPTをAu膜付Si基板上に100nm程度の薄さになるようスピンコーティングし,汎用のサイクリックボルタメトリー(CV)による液中酸化記録後,乾燥させた薄膜状の試料を,本研究で作製した高感度プローブを用いたMRFMシステムに導入した. 薄膜中の電子スピンを励起するために,試料近傍に微小コイルによる磁場(AM変調)とカンチレバー上の磁石による静磁場(外部コイルによる磁場変調)を組み合わせて磁気共鳴現象を発生させ,そのときの磁力変化でカンチレバーを駆動し,そのカンチレバーの変位を光ファイバー干渉計により測定し,その振動振幅をロックインアンプにより検出した.作製したカンチレバーを用いて,サンプルをXYZ走査させたときの振動振幅カンチレバー振幅の変化から,本カンチレバーを用いて高分子薄膜からの確かな磁気共鳴信号を計測でき,本センサを用いて,薄膜状のラジカルや欠陥など試料表面の評価に応用できることが示せた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微小サンプルの磁気共鳴画像診断に向けた磁気共鳴力顕微鏡(MRFM)のために必要な高感度プローブの開発を行なった.自らの設計による超高感度マイクロセンサを作製し,MRFM 計測システムに組み込むことができた.これまでに課題となっていた「扱いの易さ」の改善は,MRFMの構成要素である永久磁石をマイクロセンサ上に乗せて作製することができたので,改善は達成された.「計測時間の短縮」や「高分解能化」の改善を図る点においては,本年度の評価結果をフィードバックすることで,次年度改善を図る.現在,マイクロセンサの作製・MRFM計測・評価の段階に進むことが出来ており,単一細胞などの微小検体の診断を実際に行ってみて,細胞レベルでの薬物診断などへの応用に向けて,MRFMの将来の可能性を開く道筋が見えてきているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
MRFM計測において,平成25年度では,主にこれまで課題となっていた「計測時間の短縮」や「高分解能化」の改善を図る.計測時間を短縮するためには,フォースマッピングを撮る際の各立体素子(ボクセル)毎における計測積算回数を減らす必要がある.そのために,計測する信号のS/Nを改善する.信号のS/Nを上げる方法として低温計測を実施する.計測は真空雰囲気で行うため,冷却のための液体窒素を真空チャンバ内に導入し,直接マイクロセンサの冷却を行う.また,分解能を上げるためには,マイクロセンサに取り付ける磁石の微小化し計測空間分解能を高める.より小さな磁石を取り付けることで,これまで見えなかった薄膜中のラジカル濃度分布を定量的に評価できる可能性を示す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
低温計測のための液体窒素導入管を特注で購入する.カンチレバーセンサ作製プロセスにおける必要な備品を必要分購入する.
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