2012 Fiscal Year Research-status Report
オンサイト放射性核種分析のための高感度・高分解能ガンマ線スペクトロメーターの開発
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24760053
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
多田 勉 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 助教 (30533434)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 放射線 / ガンマ線検出器 / 化合物半導体 / 半導体検出器 / 臭化タリウム / デジタル信号処理 |
Research Abstract |
大体積位置検出型TlBr検出器の製作と評価を行った。育成したTlBr結晶を3×3×7 mmの大きさに加工し、電極構造をCapacitive Frisch Grid型にした単極性電荷有感型のTlBr検出器を製作した。製作した検出器を-20 °Cに冷却し、陰極に-1200 Vを印加し、陽極、Capacitive Frisch Grid電極を接地した。検出器にCs-137からのガンマ線の照射を行い、スペクトル応答特性の測定を行った。その結果、検出器からは662 keVのガンマ線ピークが明確に得られ、そのピークのエネルギー分解能は4.2%であった。 また、さらにエネルギー分解能の向上を図るため、検出器出力波形をその波形形状に応じて分類を行うクラスタリング法の適応を行った。出力波形をデジタルオシロスコープによってデジタル変換し、PCで保存を行った。その波形データを波形形状に応じて計算機上でK平均クラスタリング法により100個のクラスタに分類し、各クラスタのエネルギースペクトルを得た。それらのエネルギースペクトルのピーク位置のずれを補正し、エネルギー分解能の向上を図った。その結果、662 keVの光電ピークのカウントが増加し、エネルギー分解能が1.7%へと向上した。また、分類に用いるクラスタ数をさらに増加させる事でエネルギー分解能のさらなる向上が可能であることを明らかにした。 これにより3×3×7 mmという大体積TlBr検出器において、クラスタリング法を適応することでエネルギーの近いCs-137とCs-134の核種分離が十分可能であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大体積位置検出型TlBr検出器の製作とその特性評価を行う事ができた。またデジタル信号処理技術を用いてクラスタリング法を検出器出力信号に適用する事により、検出器のエネルギー分解能の向上に成功し、エネルギーの近いCs-137とCs-134の核種分離が可能であることを見出した。しかし、検出器製作に用いる半導体材料の純化や結晶の育成に予定よりも多くの時間がかかり多くの検出器を製作する事ができなかった。そのため、複数の検出器を用いた実験を十分に行う事ができていないためやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの開発によって得られた大体積位置検出型TlBr検出器をアレイ化し、さらなる高感度化を実現する。 作製した検出器を3×3に配列した検出器アレイの製作を行う。まず、検出器アレイからの出力信号の読み出しに必要な多チャンネルデジタイザの構築を行う。リアルタイムでの高速な演算処理を可能にするため、FPGAによって検出器からの出力波形の整形、波高値取得を行うプログラムを作成する。本プログラムを用い、製作した検出器モジュールの個々の特性を調べて検出器アレイの均一性を評価する。さらに個々の検出器からの出力波形を多チャンネルのデジタイザを通してPCに取り込み、検出器アレイを同時計数モードで動作させ、大きな一つの検出器とした時のエネルギー分解能・検出効率を評価する。また各種標準線源を用いた核種分析のテストを行い、ガンマ線スペクトロメーターとしての性能を明らかにする。さらに各検出器モジュール中でのガンマ線相互作用位置情報とその計数率より検出器へのガンマ線の入射方向を調べ、放射性核種の位置同定を行い、その位置精度を明らかにする。また、検出器アレイを反同時計数モードで動作させ、検出器中でコンプトン散乱したガンマ線成分の除去を行い、エネルギースペクトルの分解能改善を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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