2012 Fiscal Year Research-status Report
陽電子寿命測定法を用いた構造物の疲労検査装置の開発
Project/Area Number |
24760056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山脇 正人 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (30526471)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 陽電子寿命測定 / 非破壊検査 / 金属疲労 / シンチレータ / アンチコインシデンス |
Research Abstract |
研究実績の概要として、近年、原子炉の経年劣化が問題となり、これまで陽電子消滅を用いた原子炉の金属疲労や照射損傷・クリープ損傷の研究が行われてきた。しかし、従来の陽電子寿命測定法ではサンプルの切出し加工が必要である為、実際の原子炉や航空機等の構造物に関する非破壊診断法としては応用できなかった。そこで当研究室では、サンプルの切出し加工なしで陽電子寿命測定を可能とするアンチコインシデンス法を開発した。本研究ではこのアンチコインシデンス法を実際の原子炉や航空機等の構造物の測定に応用する為の要素技術の開発を行う。 平成24年度はアンチコインシデンス法のための高性能Na-22密封線源の開発を行った。 陽電子寿命測定法はNa-22放射性同位元素を用い、Na-22の取扱いが許可された放射線管理区域内で行う必要があるが、原子炉や航空機等の検査装置として応用する場合は放射線管理区域外で測定できることが求められる。その為、陽電子寿命測定用の線源としては下限数量以下(Na-22は1 MBq以下)の日本アイソトープ協会が認可した密封線源(規制対象外密封線源)の適用が必須となる。そこでまず、日本アイソトープ協会との共同開発により、高性能なNa-22密封線源の作製し、日本アイソトープ協会より規制対象外Na-22密封線源として製品化に至った。この技術を応用すれば、検査装置として、より高性能なNa-22密封線源の開発が可能になると考えられる。線源性能としては、ノイズとなる長寿命成分を低減すると共に、フィルム内で陽電子が消滅する割合を低減させることが求められる。そこで今回、Na-22をカプトンフィルムとシンチレータで封入した新線源(通常は2枚のカプトンフィルムで封入)を試作し、アンチコインシデンス法において線源内で陽電子が消滅する割合を約半分に低減しノイズ成分のない、高性能線源が実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度としては、日本アイソトープ協会との共同開発により、規制対象外の高性能陽電子密封線源が製品化された。性能評価を行ったところ、ノイズとなる長寿命成分は観察されず、高い品質が確認された。しかし、本線源は線源強度を保証するものであり、現状ではノイズ成分を保証してはいない為、ノイズ成分解析用プログラムを開発し、信頼性の向上を図る。また、このノウハウにより作製したカプトンシンチレータ線源の性能評価を行い、同時にノイズ成分が無く、かつ線源成分も約半分に低減されたアンチコインシデンスに特化した高性能線源が完成した。更に、25年度予定であった、ポータブル型寿命測定装置として遮光性を考慮した陽電子検出器の開発についても行い、Ti薄膜を用い遮光性を有する陽電子検出器が完成した。しかし、線源性能を評価したところ、ノイズとなる長寿命成分が1%程度観察された。この原因については現在調査中であるが、アンチコインシデンス法の原理的な要因の可能性が考えられる。今後この1%のノイズの影響について計算評価等を行っていき、許容範囲を超えると判断した場合はフィッティングなどの解析的な対応を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
構造物の安全性評価手段の要求は日々変化している。交付申請当時は原子炉の疲労診断が重要と考えられたが、原発廃止の傾向や、近年の笹子トンネルの崩落事故に見られるようにインフラ老朽化の危険性への注目が高まっている。よって今後の研究推進方策としては、原子炉の劣化診断の為の放射線環境下における陽電子寿命測定における評価も行いつつ、ポータブルシステムを用いた航空機等インフラの安全性評価用システムとしての開発に重点し、実際の現場での利用について検討していく予定である。例えばカプトン線源は短時間で高性能な評価システムとしてラボタイプとしての仕様を検討し、ポータブルタイプは適用範囲の拡大を考慮し、モニタリング等に用いるため、装置コストの削減や、サイズの縮小等を検討していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に要素技術の課題について確認することが出来た。次年度の研究費の使用計画としては、アンチコインシデンス法の高精度化を追求するとともに、ポータブルタイプのモニタリング陽電子寿命測定装置として実際の現場での適応を考慮した仕様について検討するための物品調達に使用する。
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