2013 Fiscal Year Research-status Report
陽電子寿命測定法を用いた構造物の疲労検査装置の開発
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24760056
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山脇 正人 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (30526471)
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Keywords | 陽電子寿命測定 / 非破壊検査 / 金属疲労 / シンチレータ / アンチコインシデンス |
Research Abstract |
これまで陽電子消滅を用いた金属疲労や照射損傷・クリープ損傷の研究が行われてきたが、従来の陽電子寿命測定法ではサンプルの切出し加工が必要である為、実際の原子炉や航空機等の構造物に関する疲労診断法としては応用出来ずにいた。そこで当研究室では、サンプルの切出し加工なしで陽電子寿命測定を可能とするアンチコインシデンス法を開発した。本研究ではこのアンチコインシデンス法を実際の原子炉や航空機等の構造物の測定に応用する為の要素技術の開発を行った。 陽電子寿命測定法はNa-22放射性同位元素を用い、Na-22の取扱が許可された放射線管理区域で行う必要があるが、オンサイト(管理区域外)測定を実現するには下限数量以下(Na-22は1 MBq以下)の日本アイソトープ協会が認可した密封線源(規制対象外密封線源)が必須であり、また、短時間で高精度に測定できることも求められる。そこで平成25年度は、日本アイソトープ協会との共同開発により製品化した、カプトンフィルム製Na-22密封線源を適用し、また、陽電子寿命測定システムの時間分解能と検出効率の決定に重要なファクターとなるシンチレータサイズの最適化を行うことで、東洋精鋼株式会社との共同開発により行っているアンチコインシデンス法を適用した陽電子寿命測定装置プロトタイプのテスト販売開始に至った。 また、汎用性の向上を目的としたポータブル型陽電子寿命測定装置の開発を行い、その上で必須となる、試作した遮光性を有するTi薄膜製Na-22線源について性能評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度としては、前年度試作したポータブル型寿命測定装置の開発の上で必須となる遮光性を有するTi薄膜製Na-22線源を採用した陽電子検出器で観察された約1%のノイズの影響について検討したところ、要因はアンチコインシデンスを行う上でノイズをキャンセルする為に用いているシンチレータの寿命成分の可能性であることが考えられた。この長寿命成分が観察される現象はカプトンフィルム製Na-22密封線源では観察されない現象であり、Ti薄膜等の金属系薄膜を適用する際に観察されるものと考えられる。そこでシンチレータ由来の陽電子寿命成分をモデルとしたノイズの計算評価を行ったところ単結晶シリコンの陽電子寿命にして10 ps程度短く見積もってしまう傾向があることがわかった。そこで、長寿命成分をフィッティングパラメータに予め追加し、通常2成分解析を行うところを3成分解析することで、このサンプル寿命のずれを1桁程度緩和できるとの計算結果を得た。この値は短時間でのその場測定においては十分許容できる範囲と考えられる。この知見を解析条件に考慮した解析システムに反映していく、また本成果について論文を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
インフラ構造物等の安全性評価に対する需要は日々変化している。交付申請当時は原子炉の疲労診断技術が重要だと考えられたが、原子炉廃止の傾向や、近年のインフラ老朽化の安全性評価への注目が高まっている。よって今後の研究推進方策としては、測定対象の形状や高放射線環境下等の様々な条件での測定を想定したポータブルタイプの陽電子寿命測定システムの開発に重点しする。例えば測定対象の形状では現状では平な面の陽電子寿命測定を想定しているのに対し、球面や切れ込み部等の形状に合わせたシンチレータ形状の陽電子検出器等を開発する。高放射線環境下の想定としてはCs-134やCo-60等ガンマ線を2本放出する核種が存在する場合での、陽電子寿命測定への影響等を評価する。また、引続きポータブルタイプの陽電子寿命測定装置の製品化に向けて小型化・低コスト化の最適化検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画通り使用することが出来た。 25年度には開発した要素技術の製品化への展開することができた。次年度の研究費の使用計画は、原子炉の老朽化診断の為の放射線環境下における陽電子寿命測定における評価と、ポータブル化システムの実現に重点し、主に小型化・低コスト化の最適化検討の為の物品調達等に使用する計画である。
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