2012 Fiscal Year Research-status Report
特異性をもつ方程式に対する超高性能数値解法の開発と理論動作保証
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24760060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
岡山 友昭 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特任講師 (80587866)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 数値解析 |
Research Abstract |
本研究の目的は,特異性をもつ方程式に対し,これまでになく高い性能をもつ数値解法を開発し,さらに理論的に動作保証も行うことである.対象とする方程式は物理・化学などでしばしば現れるが,特異性をもつ関数が現れるために数値シミュレーションが難しく,既存の汎用手法ではうまく扱えない.ただし,その特異性は境界にのみ現れ,内部では性質のよい「解析関数」になることが多く,そのような場合にはSinc数値計算法が非常に有効である.実際に研究代表者によって,特異性をもつ関数に対し,Sinc数値計算法に基づく高性能近似公式がいくつか提案されている.そこで本研究では,この成果をもとに,特異性をもつ方程式に対する超高性能数値解法の開発を行うこと,さらに理論解析によってその動作保証も厳密に行うことを目的とする. 平成24年度に研究のメイン対象とした方程式は,「Abel核」と呼ばれる弱特異な積分核をもつ方程式であり,このタイプには大きく分けて二通りある.一つは積分範囲が不定な(不定積分),Volterra型と呼ばれるタイプであり,もう一つは積分範囲が確定している(定積分),Fredholm型と呼ばれるタイプである.これらの方程式に対するSinc数値計算法に基づいた数値解法は提案されており,「SE変換」と呼ばれる変数変換と組み合わせる方法が有名である.さらに高性能化を図ったものとして,「DE変換」と組み合わせた数値解法もあり,これら二種類の数値解法の動作保証に対する理論解析の研究を進めた.特にDE変換と組み合わせる方法には,既存の理論解析法では難しい部分があったが,そのような困難な場合において有用な新たな誤差解析手法を構築した.これは今後の対象とする方程式に対しても有用な結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に行う予定であった研究 - Abel核をもつVolterra積分方程式に対するSinc数値計算法の理論解析 - Abel核をもつFredholm積分方程式に対するSinc数値計算法の理論解析 において最も困難であった部分を克服した.Sinc数値計算法にはSE変換と組み合わせる方法と,DE変換と組み合わせる方法と二種類あり,後者の場合に難しい点があった.具体的には,SE変換を組み合わせる方法の仮定の下であえてDE変換と組み合わせた場合にどのような収束性が得られるかという問題であるが,本研究ではこれに対して新たな誤差解析手法を構築し収束性解析を行った.実際は定積分近似の場合のみ解析すれば十分であったが,さらにこの結果を関数近似や不定積分近似の場合にも拡張した.このことは今後の研究を進める上でも有用な結果である. これらの成果の他にも,Abel核のような代数的な特異性だけでなく,平成25年度に対象となる対数的な特異性をもつ場合のSinc数値計算法に基づく近似法・誤差解析や,精度保証つき数値計算のための基本近似公式の誤差評価など,さらなる発展のための基礎研究も進めた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,「Abel核」と呼ばれる,代数的な特異性がある積分核をもつ場合で研究を行ったが,平成25年度は積分核が対数的な特異性の場合の積分方程式に対して研究を行う.やはりこの積分方程式にも,積分範囲が不定なVolterra型と呼ばれるタイプと,積分範囲が確定しているFredholm型と呼ばれるタイプの二種類が存在する. Abel核の場合から推定されるように,Fredholm型の場合よりもVolterra型の場合の方が比較的シンプルであると思われるため,先にVolterra型に対して研究を行う.まず,この積分方程式に対するSinc数値計算法に基づく数値解法を開発する.ここで最も近似が困難な積分核の部分がAbel核と異なっているが,この近似法については平成24年度に方針を立てている.それに基づき,Abel核の場合を参考にしてスキームを導出する予定である.スキームの導出が完了したら,それに対する理論動作保証の研究を行うが,これもAbel核の場合を参考にして今回の設定で解析し直すイメージで進める. Volterra型の場合が終われば,Fredholm型の研究に移る.対応としては,Abel核の場合のVolterra型とFredholm型の違いが今回の場合にも同様に当てはまるため,今回もそれを参考に研究を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(12 results)