2015 Fiscal Year Research-status Report
超大規模有限要素解析の実用化に向けたヘテロジニアス型分散メモリ並列反復法の開発
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24760062
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
荻野 正雄 名古屋大学, 情報基盤センター, 准教授 (00380593)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 領域分割法 / 並列有限要素法 / ヘテロジニアスコンピューティング / ハイパフォーマンスコンピューティング / 超大規模計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,電磁場解析の高速化を行った.特に,A法時間調和渦電流問題解析向けにクーロンゲージ条件を満たすようLagrange乗数を導入した不定性のない定式化に反復型領域分割法を適用し,インターフェース問題の収束性を大幅に改善することに成功した.これにより,1億自由度規模を超える大規模解析が可能となった.また,E法高周波電磁界解析向けに,異材境界の平滑化処理を伴ったボクセルデータの自動メッシュ分割技術を開発した.これにより,CT等の医療画像から生成された3次元人体モデルのボクセルデータを用いた人体内電磁界解析において,骨や臓器などの異材境界付近における電界ノイズを低減し,高精度化することに成功した.また,BDD法の高速化として,複数材料向けアルゴリズムを整備した.地盤を含むRC橋脚モデルや建屋を含む原子炉圧力容器モデルなどの重要構造物の有限要素解析に適用し,反復回数を大きく削減することに成功した.さらに,1兆自由度規模有限要素解析の実現には現在の計算機システムではストレージ容量不足が生じることが分かり,多階層精度圧縮数値記録の有限要素解析における性能評価を行った.変位や応力の圧縮率,圧縮された変位が応力の計算精度に与える影響などを評価した結果,可視化や分析に有用な情報を保持したままで1/3以下に圧縮できることが明らかになり,将来の超大規模自由度数値計算のデータ保存に有効な技術であることが示された. 近年のメニーコア型コンピューティングにおける反復型領域分割法として,部分領域ループと行列の行ループのそれぞれでスレッド並列化した場合の性能評価を実施し,将来の計算機には部分領域ループ並列が計算時間面で優れていることが分かった.また,ルーフラインに基づく性能予測とL2キャッシュ容量を考慮した分析を行った結果,最適な領域分割数にはキャッシュメモリサイズが大きく影響してくることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,エクサスケール級演算性能を持つスパコンによって解決されるべき課題で必要となる数兆から百兆自由度規模を実用時間内で実現する数値計算法の開発を行うものであり,最終目標として,数兆自由度規模モデルを用いた磁場構造連成解析の実現を目的としている.また,今後の大規模計算を支える計算機アーキテクチャの1つとして,異種演算装置の混在を想定し,ヘテロジニアスコンピューティングへの対応も目指すものである. 1兆自由度を超える超大規模解析ではデータ圧縮が最重要課題であることが分かり,将来に向けて本年度は研究の優先度を変更してデータ圧縮に関する研究を実施し,可視化や分析などの後処理に有効な精度を保持したまま有限要素解析結果データを圧縮することに成功するなど,おおむね順調にすすんでいる. ヘテロジニアスコンピューティングとして,当初はメニーコア・コプロセッサやGPU演算加速装置の新しい計算機システムが利用可能となる予定であったが,ベンダーの開発遅延により製品出荷が大幅に遅れて研究実施できなかったため,将来に向けて本年度はメニーコア・プロセッサSPARC64 XIfxでの性能評価を行った.領域分割法の性能モデルを開発するなど,おおむね順調にすすんでいる. 磁場構造連成解析システムの開発として,本年度は,前年度に開発した複素対称行列向け反復法の性能評価,人体ボクセルデータの自動メッシュ平滑化による高周波電磁界解析の高精度化など,おおむね順調にすすんでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,1兆自由度自由度規模メッシュ生成技術,医療分野応用向けに異材境界の自動メッシュ平滑化技術,構造解析向けのBDD法による堅強な反復解法,磁場解析向けのMINRESに基づく安定した反復解法,メニーコア・コプロセッサやGPU混在のヘテロジニアス型コンピュータやメニーコア・プロセッサによる将来のコンピュータに適した並列計算アルゴリズム,科学技術計算に適したデータ圧縮技術などの開発に成功してきた.これらを用いて,今後登場するエクサスケール級スーパーコンピュータを用いた超大規模数値計算の実現,さらに実問題への応用を進めていく.また,本研究における成果はオープンソースソフトウェアとして整備し,一般公開することで社会への還元を行っていく.
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Causes of Carryover |
研究期間中に構造解析・磁場解析向けの反復法や前処理の開発に成功してきたが,次世代計算機向けデータ取得用の実験装置として想定していた機器がメーカー側の開発遅延によって,出荷時期が平成28年ごろとなった.研究目的をより精密に達成するためには,最新機器を用いた追加実験をすることで,これまで得られてきた研究成果の実用性をより正確に評価し,その結果までを含めた論文投稿が必要であるため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
全国共同利用システム等で最新のメニーコア・GPU・CPUヘテロジニアス計算機を利用し,研究のさらなる発展を目指す.
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Research Products
(33 results)