2013 Fiscal Year Research-status Report
3次元曲面モデリングを利用したメッシュフリー大変形解析とGPU並列化
Project/Area Number |
24760066
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
仲田 晋 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (00351320)
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Keywords | 数値解析 / シミュレーション / コンピュータグラフィックス / 可視化 |
Research Abstract |
今年度の成果は,主に「変形する曲面の形状表現に関する技術」「曲面形状を含む空間でのメッシュフリー解析の技術」「複雑な曲面形状の可視化に関する技術」の3点である. 1つ目の「変形する曲面の形状表現に関する技術」は,ユーザの簡易的な操作で曲面形状を決定するための新たな手法を開発するという趣旨の研究であり,直接的な応用としてはコンピュータグラフィックスのための形状モデリングを想定しているものの,科学技術分野における力学的な現象の解析にも適用可能な手法である.曲面の表現としては陰関数曲面と呼ばれる技術を採用し,曲面同士の結合や位相変化を伴う変形のような複雑な処理を必要とするようなモデリング処理を陰関数曲面の特性を活かして回避し,マウスによる簡易的な入力操作でのモデリングの実現に成功した. 2つ目の成果,「曲面形状を含む空間でのメッシュフリー解析の技術」は流体を対象としたシミュレーション手法の開発に関わるものである.本研究では流体の運動を粒子法と呼ばれる手法に基づいて決定し,この流体が陰関数曲面として表現された複雑な障害物に対して適切なシミュレーションを行えるような新たな定式化を行った.さらに,この計算を高速に行うための並列アルゴリズムを開発し,GPUで効率的な並列計算が行えることを確認している. 3つ目の成果,「複雑な曲面形状の可視化に関する技術」は3次元物体の形状表現にかかわる技術であり,力学的な現象を計算機上で再現するための物体形状の表現を応用の一つとして想定しているものである.これも陰関数曲面と呼ばれる技術を基礎としており,曲面としての性質を保ちつつユーザの要求に応じた形状変形や加工を実現する独自の手法を開発・実装したものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題で開発する計算技術・可視化技術はは3次元物体の大変形解析を対象としており,特に当該年度ではGPU並列化を利用した高速化の実現を目標としていた.このうち「可視化」については大きな進展が見られた.すなわち,従来は曲面上に可視化用の点群を生成する処理が高速化のボトルネックとなっていたが,GPU並列化に適したアルゴリズムを新たに開発することによりこの処理の高速化に成功した.この成果により,3次元物体の大変形解析の結果として得られる物理量のうち,特に応力や変位のように空間的に分布する量を視覚的に把握するプロセスの高速化に貢献することができた. 一方.「計算技術」については現状では実装レベルでの実現ができていない.ただし,実現のための方法の検討は行っており,実現の見通しもある程度たっているため,当初予定していたメッシュフリー大変形解析のGPU並列化は可能と考えている.併せて,メッシュフリー法の代替手法としてアイソジオメトリック有限要素法と呼ばれる新しい解析手法について,導入の可能性の検討を始めており,次年度の研究の推進に役立てたい. 本研究課題で重要な役割を果たす3次元形状表現の技術については大きな進展があったと考えている.具体的には複雑な形状を陰関数曲面として表現し,その加工・変形を可能とする形状モデリング技術の開発に成功した.我々の手法の特徴は複雑な曲面形状の加工が容易に行えることに加え,変形の過程を視認しながら加工するための高速レンダリングが可能となることである. 以上より,メッシュフリー大変形解析の並列化については遅れがみられるものの,敬譲表現と可視化については順調に進展しており,総じて一定の成果は得られたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度を迎えるにあたって,当初の目的をできるだけ達成するために以下の方針で進めることとする. 一つは大変形メッシュフリー解析のGPU並列化と汎用化の実現である.ここでの汎用化とは材質の多様化と静的・動的解析の両方を実現するという意味である.非線形な問題に対していかに適切なアルゴリズムを構成するかがポイントであり,GPU並列化の観点で性能評価を行う. 二つ目はメッシュフリー解析に適した可視化手法の開発である.本研究課題の特徴は物理量の3次元的な分布がメッシュ構造無しで定義されていること,および境界面の形状もメッシュのない陰関数曲面として表現されていることである.従来の可視化手法のほとんどは格子や四面体のような構造を持つことを想定しているが,我々は可視化にもメッシュフリーの概念を導入し,高速性をできるだけ保ちつつ適切な可視化を実現するための方法を模索する.この実現には我々がこれまで開発した曲面描画の技術を一部利用することが可能であり,メッシュフリーに特化した新手法としての技術開発を行う. 補足として,現在我々が取り組んでいる研究の一つに流体シミュレーションがある.これは大変形解析とは異なるものの,メッシュフリーという点では共通しており,特に可視化の本質的な部分については同じ問題を持っている.このことを踏まえ,流体シミュレーションにおける可視化技術も並行して開発し,本研究課題における大変形解析の可視化に還元する.
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Research Products
(6 results)