2012 Fiscal Year Research-status Report
耐熱超合金の疲労き裂進展における結晶粒界の役割に関する実験的検討
Project/Area Number |
24760073
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
阪口 基己 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (60452083)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 疲労き裂進展 / Ni基超合金 |
Research Abstract |
本研究では,Ni基耐熱超合金の疲労き裂進展をターゲットにし,実機材と同程度の厚さを持つ小型サンプルを用いた実験により,薄肉材の疲労き裂進展特性に対する結晶方位やすべり,結晶粒界などの結晶学的因子が与える影響を明らかにすることを目的としている. この目的達成のため,平成24年度は,Ni基超合金から実際のガスタービン翼と同程度の厚さ(0.5mm)を有する小型CT試験片を採取し,独自に設計・製作した試験系を用いて疲労き裂進展試験を行った.Ni基超合金の単結晶材ならびに一方向凝固材から得られた結果を標準試験片のき裂進展特性と比較しながら,小型試験片のき裂進展に及ぼす結晶方位と結晶粒界の影響を検討した. その結果,まず,単結晶材では、小型試験片のき裂進展速度は標準試験片のそれよりも高く,負荷方向が<110>方位になる試験片は<100>方位になる試験片よりもき裂進展速度が低くなることを明らかにした.また,一方向凝固材では,き裂が結晶粒界に接近すると進展経路が屈曲し,き裂進展速度が低下することに加えて,負荷方向が<110>方位になる結晶粒内では<100>方位になる結晶粒内よりもき裂進展速度が低くなることを明らかにした.これらの小型試験片における疲労き裂進展挙動は,厚さ5mm程度の標準試験片での挙動からは予測できないものが多い.これは,薄肉構造を持つ実際のガスタービン高温部材のき裂進展に対しては,従来の標準試験片から得られたデータを用いることの限界を意味しており,実機材の信頼性の高い設計・維持管理には,薄肉の小型試験片を用いた実験的検討とそれに対する合理的解釈が必須であることを強く示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の所属機関変更にともない,実験系の再設定や再構築が必要となり若干の計画の遅れはあったものの,研究計画はおおむね順調に進んでいる.本研究の遂行においてもっとも肝要な部分は,厚さ0.5mmの小型試験片に対して精度よく繰返し負荷を加え,再現性の高い疲労き裂進展挙動を実験的に捕捉することにあるが,平成24年度の研究により再現性の高い実験系が構築されており,今後の研究計画の見通しも明るい.
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Strategy for Future Research Activity |
現試験系に高周波加熱装置あるいは電気炉等を組み合わせ,高温での疲労き裂進展試験を行うことが求められる.そのうえで,①き裂進展における結晶粒界の役割が,(i)試験片板厚(0.5mm,1mm,2mm),(ii)粒界を挟む2粒の結晶方位と方位差,(iii)き裂面と粒界の幾何学的配置(tilt角,twist角)にどのように依存するかを精査する,②項目①で抽出した粒界の役割が,(iv)試験温度(室温,650℃,850℃),ならびに,(v)時間依存型の組織変化や粒界脆化によりどのように変化するかを抽出する,③材料中の結晶粒の方位,結晶粒界の形状・分布,ならびに,その中を進展したき裂の経路を再現した弾粘塑性解析を行い,DS材小型サンプルの疲労き裂進展における結晶粒界の定量的役割を明らかにするとともに,項目②および③で得られた実験結果に合理的解釈を与えるき裂進展モデルを構築することが必要になる.これらの検討を通し,耐熱超合金に対する信頼性の高い寿命予測法の確立を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高温での実験を可能にするため,試験片加熱用の高周波加熱コイル(20万円程度)を購入する予定である.また,耐熱超合金のサンプル,高温での温度測定に用いる熱電対,試験片加工用の工具などの消耗品も購入予定である.成果発表と情報収集をのため,国際学会(ドイツ,1回)ならびに国内学会(2回)に出席するための旅費も拠出する予定である.
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