2012 Fiscal Year Research-status Report
ポアソン効果により高エネルギ吸収特性を発現する傾斜フォーム充填衝撃吸収構造の開発
Project/Area Number |
24760076
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
樋口 理宏 金沢大学, 機械工学系, 助教 (50455185)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 衝撃 / エネルギ吸収 / シンタクチックフォーム / 材料設計 |
Research Abstract |
本研究課題では,薄肉円筒に軽量なコア材として内挿した傾斜構造を有するシンタクチックフォームのポアソン効果と傾斜構造を効果的に利用した衝撃軸圧縮荷重下で高いエネルギ吸収特性と衝撃緩和効果を両立する新規の衝撃吸収手法の開発を目的としており,本年度に実施した研究内容および成果は以下の通りである. まず,均質なシンタクチックフォームにおけるセル構造とポアソン比の関係を有限要素解析により評価し,プラトー応力領域においてポアソン効果を発揮し,ポアソン比はマイクロバルーンの粒径には依存しないことを明らかにした.さらに,エポキシ樹脂にアクリロニトリル系マイクロバルーンを充填した均質なシンタクチックフォームを開発し,静的圧縮変形下における応力-ひずみ応答およびポアソン比の測定を行い,プラトー応力領域においてポアソン効果を有することを確認した.また,ポアソン効果による横ひずみを拘束した場合,エネルギ吸収量が大幅に上昇することを明らかにした. 次に,薄肉円筒にシンタクチックフォームを内挿し,軸圧縮試験を実施した.シンタクチックフォームの横方向の変形により薄肉円筒を円周方向に押し広げ,また薄肉円筒がシンタクチックフォームの横ひずみを拘束するという相互干渉により,薄肉円筒単体の場合と比較して単位質量あたりのエネルギ吸収量を20%程度増加できることを明らかにした.さらに,落錘衝撃試験により,衝撃荷重下においては母材であるエポキシ樹脂の強度のひずみ速度依存性により,さらなるエネルギ吸収量が見込めることがわかった. またこれらと並行して,動的有限要素法により傾斜構造を有するフォームの衝撃エネルギ吸収特性の評価を行った.衝突端側から被保護空間側に向けてシンタクチックフォームの密度を低下すなわちマイクロバルーンの充填量を増加させることにより,被保護空間側に作用する衝撃荷重を低減できることを明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は,当初の研究実施計画に従い,均質なシンタクチックフォームのポアソン効果によるエネルギ吸収特性の向上に重点をおいて研究を実施し,本研究課題で提案する衝撃吸収手法の第一段階,すなわちシンタクチックフォームのポアソン効果による相乗効果を用いたエネルギ吸収特性を向上させる手法を確立することができ,一定の成果を確保することができたといえる. また,動的有限要素法により傾斜構造を有するフォームの衝撃エネルギ吸収特性の評価を行うことで,傾斜構造により衝撃緩和効果を発揮できることを明らかにし,次年度の研究実施計画に向けて順調に研究を推進できているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続いて傾斜機能シンタクチックフォーム充填衝撃吸収構造に拡張して動的陽解法による有限要素解析を実施し,シンタクチックフォームのポアソン効果による相乗効果を生かしつつ,傾斜構造による動的非平衡状態を利用することで衝撃圧縮荷重下で高いエネルギ吸収特性と緩衝効果を両立する新規の衝撃吸収手法の構築するための材料設計を行う.ここでは,マイクロバルーンの傾斜分布構造だけでなく,母材樹脂の機械的特性の傾斜分布についても検討項目とし,本研究課題で提案する衝撃吸収手法を最大限に発揮するための傾斜機能シンタクチックフォームのポアソン比および機械特性の空間分布と薄肉円筒の幾何形状と材料特性の調査を行う. 次に,解析で得られた力学的知見から見出した材料特性を有する傾斜機能シンタクチックフォームの製造・開発を行い,傾斜機能シンタクチックフォーム充填衝撃吸収構造の衝撃エネルギ吸収特性を衝撃試験により実験的に評価を行う.ここで,衝撃時の動的非平衡状態にある入力荷重と出力荷重を実験的に測定するために,スプリット・ホプキンソン棒法圧縮試験機を設計・製作し,動的非平衡状態にある試験片の両端の荷重測定および変位測定に応用する.また,スプリット・ホプキンソン棒法圧縮試験では得られないより高速な衝撃速度に対応できる高速衝撃試験機を設計・製作し,低速から高速における傾斜機能シンタクチックフォーム充填衝撃吸収構造の衝撃吸収特性の評価を行う.さらに,得られた成果を踏まえて,本研究課題で提案する高エネルギ吸収特性と衝撃緩和を両立する衝撃吸収手法の性能評価を行うとともに,その工学的応用範囲について検討し研究成果として取りまとめる.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,購入を予定していたCCDカメラを現有のデジタルカメラで代替することが可能となったため当該研究費が生じた. そこで,平成25年度の研究を実施する上で必要となる衝撃試験機,特に平成24年度当初に予定をしていなかった高速衝撃試験機の製作費として補填することとする.
|
Research Products
(4 results)