2012 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ金属粉末射出成形の高品質・高機能化のための革新的バインダシステム
Project/Area Number |
24760079
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長田 稔子 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90452812)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 金属粉末射出成形 / バインダ / 脱脂 / 変形 / 機械的特性 |
Research Abstract |
金属粉末射出成形法(MIM)のマイクロ化における非常に大きな問題は,バインダ量の増加である.粉末粒径が小さくなると,比表面積の増大が激しいため,粉末間の摩擦を抑えて,射出成形時の流動を容易にする必要が生じるため,多量のバインダが必要となる.一方バインダは焼結前に除去する必要があり,溶媒脱脂や加熱脱脂が行われるが,この脱脂プロセスは最終製品の変形や欠陥に直結する.本研究ではμ-MIMの品質向上を狙い,従来材料を根本から見直した全く新しいバインダシステムを提案し,新たな実験評価法の確立と共に実プロセスにおいて効果を実証していく. まずは保形性向上による変形の抑制に関する検討を行う.脱脂が完了し,焼結が開始するまでの間,粉末間にはバインダ分の空隙が生じる.μ-MIMで微細粉末を使用した際にバインダ量が多くなると,このような粉末間の間隔が拡大し,脱脂体の損傷が起こりやすくなる.そこで通常のバインダに加え,高分解点の熱可塑性樹脂をバインダ成分として添加し,脱脂時の粒子間接合の強化を狙う.分解点の高いポリイミドを粒子状態で添加し,金属粉末のネックの成長が始まる焼結開始付近まで樹脂により形状保持を行った.機械的特性も評価するために,これまでに検討してきたマイクロダンベル形状を参考に,成形・評価が容易となるような試験片を,新規導入した小型射出成形機によって作製した.焼結後にバインダ成分の炭素が残存することにより,強度向上が見られた.さらに,バインダに無機物質を含む新たな樹脂成分を添加することを提案する.脱脂体にこの無機物質を残存させて脱脂体の密度を増加し,さらに焼結体の密度を向上させる.このような成分としては,シリコーンゴムを利用しSi分を調整した焼結体の評価を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
μ-MIM部品の機械的特性評価のためには小型試験片を作製する必要があることから,小型の成形機を導入し,小型試験片の作製が可能となった.またより均質な原料の作製ができるように,混練樹脂をすべて粉末の形で添加することや,小型混練機の使用を検討したうえで,新たなバインダ成分としてポリイミドやシリコーンゴムを導入し,その効果として機械的特性の評価を試みた.
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Strategy for Future Research Activity |
新しいバインダシステムの有効性を確認するため,脱脂挙動の詳細な調査を行う.混練物の熱分析,ガス重量分析,残留炭素量分析などを行い脱脂挙動を定量的に評価する.さらに,成形体および脱脂過程の途中段階の試料を取り出して顕微鏡観察を行い,粉末間距離や残ったバインダの状態を微視的に観察し,脱脂時の形状保持および損傷発生のメカニズムの解明を試みる. また,高温顕微鏡を利用し,脱脂挙動のその場観察も試みる.一般に脱脂時は発生ガス量が非常に多いため,試料室のガラスが曇るなどの問題が生じ,観察が困難であることが知られている.そこで,実際の脱脂時と同様にキャリアガスの導入および流量制御可能な観察ユニットを作製する.なお,初年度に購入予定であった観察ユニットは,次年度の予算と合わせて,ガス流量の制御が可能なように特注したものを購入する予定である. これらの分析と観察の組み合わせにより,バインダ脱脂挙動の評価手法を確立するとともに,新しいバインダシステムが脱脂体の保形性に及ぼす効果について検討を行う.同時に金属粉末の焼結温度の低下も有効である.低融点の金属粉末や金属ナノ粉末を添加し,焼結開始温度を低下させることも検討する.さらなる小型化を狙い,提案したバインダシステムをナノ粉末に対し適用することも試みる.これにより高機能性を有する新たなμ-MIMの応用展開を提案したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
脱脂時の変形調査のための高温顕微鏡観察ユニットを購入する.消耗品として,金属粉末およびバインダ樹脂,焼結用ガスの費用を考えている.また,成果報告として学会への参加,論文投稿を予定している.
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