2012 Fiscal Year Research-status Report
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24760080
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
武富 紳也 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20608096)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 水素拡散 / 水素マイクロプリント法 / 分子静力学法 |
Research Abstract |
水素をエネルギー源として利用するには,金属材料の強度信頼性確保が課題である.水素による金属材料強度の劣化(いわゆる水素脆化)は,1金属中への水素侵入,2破壊起点(き裂,格子欠陥)への水素の拡散・凝集,3水素による材料強度低下の3つのプロセスが考えられる.水素脆化を予測し未然に防ぐ為には,破壊起点への水素の拡散・凝集を高精度に予測する手法構築が重要である.金属中の水素拡散は濃度勾配と応力(静水圧)勾配を駆動力とした拡散方程式で表される.水素拡散シミュレータ等では濃度勾配項と応力勾配項に乗じる重み係数を無視した線形結合による一次近似拡散方程式を基礎式としており,高精度な拡散方程式の構築による解析結果の定量性向上が期待されている.本研究では,応力勾配の影響を適切に評価した拡散方程式の構築を目指した基礎的研究を行った.本年度は,分子静力学法を用いた解析により,応力勾配下での拡散係数に異方性が発現することが示唆された.また,水素マイクロプリント法を用いた実験により簡易的に拡散係数を測定する手法の構築を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子静力学法を用いて,応力勾配下での拡散係数を導出した.分子静力学法による拡散係数導出方法の定量性向上に向けた指針を獲得した.得られた結果より応力勾配に依存して拡散係数に異方性が生じることが示唆された.さらに,湿式水素チャージした試験片に水素マイクロプリント法を施すことで水素拡散係数の簡易測定手法構築を進めた.これらの研究を通して対外発表を行い,活発な議論とともに他研究者にも大いに興味をもたれた.
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Strategy for Future Research Activity |
分子静力学法を用いた拡散係数導出手法の高精度化にむけて,知見の獲得を継続して進める.また,構築した手法を用いて,空孔拡散への応用を進める.また,実験による水素拡散係数の簡便な導出方法の構築は,試験数を増加させることで定量性向上をはかるとともに,試験片に4点曲げ応力を負荷することで,応力勾配下での拡散係数導出を試みる.これらの研究を通じて,拡散方程式の高精度化に資する基礎的知見の蓄積に邁進する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は計算機環境の再整備を実施することで,計算の効率化をはかるため計算機を追加導入する.また,実験の本格化に伴い,4点曲げ応力を負荷する試験機の導入を行う.得られた成果の対外発表を行う.
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