2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24760080
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
武富 紳也 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20608096)
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Keywords | 拡散係数 / 水素脆化 / 水素マイクロプリント法 / 分子静力学 / 分子動力学 |
Research Abstract |
水素をエネルギー源として利用するには,金属材料の強度信頼性確保が課題である.水素による金属材料強度の劣化(いわゆる水素脆化)は,①金属中への水素侵入,②破壊起点(き裂,格子欠陥)への水素の拡散・凝集,③水素による材料強度低下の3つのプロセスが考えられる.水素脆化を予測し未然に防ぐ為には,破壊起点への水素の拡散・凝集を高精度に予測する手法構築が重要である.金属中の水素拡散は濃度勾配と応力(静水圧)勾配を駆動力とした拡散方程式で表される.現在の水素拡散シミュレータの多くは濃度勾配項と応力勾配項に乗じる重み係数を無視した線形結合による一次近似拡散方程式を基礎式としており,高精度な拡散方程式の構築による解析結果の定量性向上が期待されている.本研究では,応力勾配の影響を適切に評価した水素拡散方程式の構築を目指した基礎的研究として,特に拡散係数に着目した研究を行った.まずα鉄を対象として分子動力学法を用いた解析を行い,拡散係数に及ぼす体積ひずみと外力の影響が微小であることを確認した.次に分子静力学法を用いた拡散係数評価手法を用いて応力勾配下での拡散係数を算出した.その結果,応力勾配に応じて拡散係数が変化することが示唆された.さらに,解析によって得られた結果の妥当性を評価するため,応力勾配下での拡散係数の測定が可能になると考えられる水素マイクロプリント法を用いた実験を実施し,SUS304の拡散係数を導出した.得られた結果は既報の値と定量的によく一致することが確認された.さらに本手法を用いて,応力勾配を負荷した試験片における見かけの拡散係数を評価した結果,見かけの拡散係数の増加が確認された.以上の一連の研究によって,物質拡散に及ぼす応力勾配の影響を適切に評価するための拡散係数評価手法の基礎が構築できた.
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