2013 Fiscal Year Research-status Report
イオン導電性高分子アクチュエータにおける疲労損傷メカニズムの解明
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24760084
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大宮 正毅 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (30302938)
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Keywords | アクチュエータ / 高分子 / 電解質膜 / 疲労 / 損傷 / 変形 |
Research Abstract |
本研究では、イオン導電性高分子アクチュエータの疲労損傷メカニズムを解明することを目的としている。イオン導電性高分子アクチュエータは、高分子電解質内部に含有された陽イオンと水分子の移動によって変形を生じるが、長期間繰り返し変形させると、変形応答特性が次第に悪くなる。しかし、その応答劣化メカニズムについて詳細に検討した例はなく、イオン導電性高分子アクチュエータの疲労損傷形態とその発生メカニズムについて明らかにすることは、イオン導電性高分子アクチュエータの実用化に向けて大変重要な課題である。そこで、平成25年度は、機械的疲労特性に着目し、その疲労損傷メカニズムを解明することで、アクチュエータの応答劣化の原因を明らかにすることを目的とした。 本研究では、電解質を含む水溶液中で交流電圧を印加し、その際の先端変位および両端電圧の測定を行い、サイクル数と変形特性の関係を明らかにした。そのうえで、交流インピーダンス測定、クリープ試験、X線光電子分光法(XPS)による電極表面の分析を実施し、変形特性の変化に影響を与えうる3つの要因(Nafion膜内部のイオンの応答、電極の機械的変形・破壊、電極の化学変化)について検討を行った。 その結果、水溶液中でIPMCアクチュエータに周期的な電圧を印加した場合、100サイクル付近でカウンターイオンの膜-電極界面での抵抗が減少し、より多くのカウンターイオンがより短時間で電気二重層を形成するようになった。その結果、変形の振幅は100サイクル前後からサイクル数とともに増加する傾向にあった。また、表面観察の結果、このときの電極の機械的変形・破壊による影響は限定的であった。そのため、電圧印加時に電極において生じる還元反応により、両極の還元反応の進行に差が生じ、その結果として、中立点の位置がサイクル数の増加とともに片側に移動し、振幅が増大したものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオン導電性高分子アクチュエータの繰り返し変形特性と、表面電極、電解質膜の損傷状態とを関連づけられたため、研究計画はおおむね順調に進展している。一方、そのメカニズムについての考察が不十分であるため、今後は実験条件を変えながら、検討していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、耐久性能に影響を及ぼすパラメータを選定し、イオン導電性高分子アクチュエータの耐久試験を実施していく。また、試験片の表面、破面および断面の電子顕微鏡観察を行い、き裂発生や進展の様子について詳細に検討する。その際、電極金属膜と高分子電解質膜の損傷を区別するために、耐久試験の途中で試験を中止した場合の試験片の観察も同時に行う。 以上より、イオン導電性高分子アクチュエータの応答劣化特性について、そのメカニズムを解明することを目指す。
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Research Products
(2 results)