2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノ分散材料のコーティングによる先進複合材料の超長寿命化
Project/Area Number |
24760089
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
荒尾 与史彦 同志社大学, 理工学部, 助教 (40449335)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ナノ分散 / 溶融混練 / 高強度 / 高機能化 |
Research Abstract |
本年度は,ナノ分散を促進させるための混練技術の確立と,ナノ分散させた複合材料の特性評価を行った.具体的には,二軸押出機を用いたコンパウンド技術において,ナノ分散を促すスクリューセグメントの検討を行った. カーボンナノチューブとポリプロピレンを二軸押出機において,溶融混練を行い,電気的特性と分散性の評価を行った.二軸押出機において,ナノ分散を促進させるためには,スクリュ回転速度や投入量など,比エネルギに関わるパラメータを大きくすることが重要である.またスクリュ構成では,樹脂に与えるひずみ量,エネルギが,せん断応力よりも重要なパラメータであることを解析,実験より,明らかにした.この結果をもとに,最適なスクリュ構成を設定した結果,電気伝導性を付与するためのカーボンナノチューブの必要量は,1.0wt%から0.8%へ,約20%低減することができ,カーボンナノチューブの分散性を改善することができた.以上の結果を国内会議で公表した. カーボンナノチューブ以外のナノフィラーについても検討を行った.層状のナノフィラーであるナノクレイの剥離分散を促進させるための混練パラメータについて調査した.ナノクレイもナノチューブと同様に,混練の際に樹脂に付与するエネルギが重要であることを実験的に明らかにした.与えるエネルギを増加させることで,クレイの剥離分散が促進され,剛性の向上に寄与することを確認した.この結果を論文投稿している. ナノフィラーを分散させたペレットを,炭素繊維と混ぜ込み,ナノ,ミクロレベルで強化したハイブリッド複合材を成形した.ナノフィラーを混ぜることで,炭素繊維と樹脂の界面強度が改善され,強度が大幅に上昇する結果を得た.本実験結果を国際会議にて発表し,英文ジャーナルに投稿中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は,ナノフィラーを樹脂中に分散させる技術を確立することであった.カーボンナノチューブ,ナノクレイなどを溶融混練する際にどの様に混練すればよいか,具体的な指針を提示することができた.これまでには凝集を破壊するようなせん断力の大きさが議論されてきたが,せん断力だけでは再び再凝集するため,付与するひずみ量が重要であることを見出した.その結果をもとに,付加するひずみ量,エネルギが大きくなるようにスクリュを設定することで,ナノ分散を促進させることができた. また,分散の定量化も行った.透過型電子顕微鏡を用いたミクロ領域の分散性の直接評価の他に,レオロジー解析によりマクロなナノ分散の定量化を行うことができた.また,これらの評価方法は相関関係があることを確認した. 以上のように,ナノ分散の評価方法から,最適な分散技術の提案を行うことができ,概ね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
去年度の成果を踏まえ,今年度はナノ分散させたフィルム材,およびコーティング材を作成する.最適化した溶融混練法による分散技術を用いて,ポリ乳酸のフィルムを成形する.ポリ乳酸はじん性,ガスバリア性に劣るので,フィラーをナノ分散させることでじん性,ガスバリア性を改善したナノ分散ポリ乳酸フィルムを作成する予定である. 上記研究は溶融混練方法に着目しており,フィラー量が0-10wt%の少量の範囲での材料を作成した.複合材料の機械的特性,バリア特性はフィラー含有率が多くなるほど改善される.そこで本年度では,溶融混練法の他に,ソルベント・キャスティング法によってコーティング材,フィルムを作成する.この手法では,水溶液中にナノ粒子を分散させ,水溶性樹脂と混ぜ合わせた後,液体を揮発させることで,薄膜を得ることができ,フィラー量が100%のフィルムを成形することも可能である.この手法により,ナノクレイを高含有率で,かつ面内に配向させたフィルムを得ることができる.このフィルムの最適な材料の選定,材料の割合を模索して,さらにマクロ強化材である炭素繊維やカーボンナノファイバを混ぜ込むことで,さらなる高強度化をはかり,従来にない高強度かつ高機能のフィルムを成形する. また固体状態での混練ナノ分散技術についても検討を行う.メカニカルミリングによって,固体状態で機械的にナノ分散をさせて,その後固めることで,ナノ分散材料を調製する.アルミやチタン微粉末をナノレベルまで引き伸ばし,それを強化材,バリア材として用いる予定である. 以上のように,本年度はナノ分散技術をより広範囲に広めて,機械的特性,バリア特性に優れるフィルムおよびコーティング材を開発する予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は,ナノ分散させるためのスクリュセグメントを設計・製作する予定であり,その製作費に使用する.今回新たにソルベント・キャスティング法と,メカニカルミリング法を試みるため,これらに必要な備品に使用する. また,材料費としてポリ乳酸などの樹脂材料,カーボンナノチューブ,ナノクレイ,グラフェン等のナノフィラー,チタン微粉末,アルミニウム微粉末等の金属材料に使用する予定である. ガスバリア性の評価試験機は高額で購入できないために,外注試験を依頼する予定である. 昨年度と今年度で得られた結果を国内,国際会議で発表するために必要となる費用,論文として投稿した際に必要となる費用として使用する.
|