2013 Fiscal Year Research-status Report
リモデリングによる海綿骨の骨質変化を考慮した骨折リスク評価へのアプローチ
Project/Area Number |
24760091
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
田原 大輔 龍谷大学, 理工学部, 講師 (20447907)
|
Keywords | 計算バイオメカニクス / 骨リモデリング / 海綿骨 / 有限要素法 / 骨梁形態 / 力学刺激 / 骨質 / 骨折リスク |
Research Abstract |
本研究は,骨リモデリングシミュレーションとマルチスケール応力解析手法に基づき,骨梁形態変化の予測と骨質の変化を考慮した骨折折リスク評価手法を確立するものである.平成25年度は,骨リモデリング則において,リモデリングの駆動力となる力学刺激量の数理的記述の妥当性の評価に注目し,力学刺激量の差が骨梁形態とモデル全体の骨量の変化に与える影響を評価した.また,これまでの骨内の局所領域を対象とした検討を骨の大きな領域に拡張して適用し,骨梁形態変化の過程の妥当性を評価することにより,以下の成果を得た. 1. リモデリングの駆動力となる力学刺激量として,ミーゼスの相当応力および,ひずみエネルギー密度(SED)を用いた計算を行い,一様圧縮荷重作用下におけるリモデリング後の骨梁形態を比較・評価した結果,SEDの不均一性を用いた場合,骨形成・骨吸収が活発に進行することがわかった.また,ブタ海綿骨モデルの初期形態における両分布間の相関の定量化により,SEDをリモデリングの力学刺激量として考える場合,高い感度で骨梁形態変化が進行することが示された. 2. 曲げ荷重等の異なる外部荷重作用下における骨内の局所の力学刺激量と骨梁形態変化の関連を評価した結果,外部荷重の種類によらず,ミーゼスの相当応力の不均一性をリモデリングの駆動力として得られた骨梁形態は,外部荷重に対し,より力学的に適応した形態を有することが示された. 3. ヒト大腿骨の2次元断面モデルを対象とし,両力学刺激量を用いた計算を行い,実骨の形態との比較を行った結果,計算により得られた骨梁形態と実骨の形態で一致する領域が見られた.現段階では,力学刺激量の変化による骨梁の粗密や配向の程度の変化が部分的に観察されるのみであったことから,対象モデルのスケールと骨梁形態変化の過程の関連について,より詳細な評価が必要であることが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度から開始した本研究において,当初の目的に掲げた1) 骨質決定の主因子である生体アパタイト(BAp)結晶配向性に起因する骨梁骨の力学的特性の異方性を反映した骨リモデリング則と,骨梁内の応力分布の変化の強調評価手法の開発,2) 海綿骨の骨梁形態変化の数理的記述の妥当性の評価 の2点を遂行できている.特に,平成25年度は,2)の目的達成のための検討を集中的に行い,以下の成果を上げることができた.このため,研究は順調に進展していると考える. 1. ブタ海綿骨モデルを対象に,健常例と骨粗鬆症例のリモデリング条件を同定し,得られた骨梁形態に対して,BAp結晶配向に起因する材料異方性を考慮した均質化解析により,マクロ・ミクロスケールにおける力学的特性評価を行った.その結果,骨粗鬆症例は,日常的な外部荷重が作用する自重方向に対し唯一高い剛性を維持していることが示された.また,BAp結晶配向が骨梁骨の剛性を高める重要な役割を担っていることが示唆された. 2.リモデリングの駆動力となる力学刺激量として,ミーゼスの相当応力とSEDを用いた計算を行った結果,SEDの不均一性を用いた場合,骨形成・骨吸収が活発に進行することがわかった.また,異なる外部荷重作用下における骨内の力学刺激量と骨梁形態変化の関連を評価した結果,ミーゼスの相当応力の不均一性をリモデリングの駆動力として得た骨梁形態は,外部荷重に対し,より力学的に適応した形態を有することが示された. 3.大腿骨の2次元断面モデルに対し,ミーゼスの相当応力とSEDの不均一性を力学刺激量として用いた計算を行い,実骨の形態との比較を行った結果,力学刺激量の変化による骨梁の粗密や配向の程度の変化は,部分的な一致が観察されるのみであった.このため,対象モデルのスケールと骨梁形態変化の過程の関連について,さらに詳細な評価が必要であることが示唆された.
|
Strategy for Future Research Activity |
1. これまで海綿骨の局所的な骨梁モデルを対象に検討してきた骨梁形態変化に伴う骨質の変化と骨折リスクの変化の関連について,実骨の形態分析結果との比較による詳細な評価・考察を行うため,大きな骨の領域の3次元モデルを対象とするリモデリングシミュレーションと力学的特性評価に取り組む.このため,リモデリングシミュレーションの並列計算機環境を整え,できるだけ詳細な要素分割を施した大規模な海綿骨モデルによる計算に挑戦し,骨質と骨折リスクの評価手法の確立および,その有用性を提示することを目指す. 2. 骨リモデリング則の妥当性をさらに定量的に評価するため,海綿骨の形態特性を示す指標を定義し,リモデリングの駆動力となる力学刺激量を変化させて計算を行い,骨質を決定づける骨梁形態変化の記述のための適切な力学的物理量を明確にする.また,骨形成・骨吸収の平衡状態とともに,骨梁形態変化に影響を及ぼす力学刺激量感知径の変化,モデルの外部荷重条件や皮質骨の外形状が,骨梁形態の変化と骨折リスクの変化に与える影響を定量化する. 3. ヒト椎体の健常例と骨粗鬆症例に対するマイクロCT撮影による形態観察を行うとともに,そのイメージベース計算モデルにおける骨形成・骨吸収の平衡状態,力学刺激量感知径と,骨梁形態変化・骨折リスクの関連を定量化し,骨粗鬆症が進行するリモデリング条件を考察する. 4. 具体的な疾患に対する骨リモデリング則の臨床応用性を評価するため,リモデリング現象が密接に関連することが予想される変形性股関節症の骨嚢胞および,脊椎固定術におけるスクリュー周囲の骨形成・骨吸収現象に着目し,力学場の変化と骨梁形態の変化を評価する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に並列計算機の導入を検討していたが,リモデリング則の妥当性の基礎的検討に集中的に注力し,計算大規模化への応用の可能性を詳細に見極めた結果,平成26年度に導入することが望ましいと判断したため. 並列計算機環境の整備に大部分の金額を使用する計画である.
|
Research Products
(11 results)