2012 Fiscal Year Research-status Report
全方位高感度検出型ナノピペットプローブの開発と微小開口の内部形状測定に関する研究
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24760097
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊東 聡 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00624818)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノピペット / 形状計測 / シェアフォース / 接触検出 / ナノメトロロジー / マイクロノズル / マイクロスリット / 全方位検出 |
Research Abstract |
インクジェットプリントやオフセット印刷等の技術を応用し電子デバイスやディスプレイを作製するプリンテッドエレクトロニクスの発展が新たな微細加工技術として近年注目されている。しかしながら、プリンテッドエレクトロで作製されるデバイスの性能は加工工程で使用するマイクロノズルやマイクロスリット等の開口部形状精度に依存する。そこで本研究ではマイクロスケール開口部形状の精密計測のために、微小球付きナノピペットを用いた全方位の接触検出が可能な高感度検出型プローブを開発を目的として取り組んでいる。本研究の目標はマイクロメートルオーダーの微小構造物をナノメートルオーダーの分解能により形状測定を実現することである。 全方位からの接触検出を実現するためにガラス製ナノピペットの先端にガラス微小球を配置した微小球付きナノピペットを作製した。先端が球状びプローブは全方位に対して均一な形状を維持することが可能になる。再現性良くプローブを作成するために、光学顕微鏡観察下において動作する精密組立装置を試作した。プローブと試料との接触検出には、音叉型水晶振動子の圧電効果を用いた高感度センサを開発した。またプローブと試料の接触検出には、試料表面に存在する水膜層との相互作用を応用したシェアフォース検出法を採用した。 シェアフォース検出によって、微小球付きナノピペットプローブは5 nmステップの変位を検出することが可能であり、ナノメートルオーダーの分解能を実現することが可能であった。また先端に微小球を配置したプローブは全方向から試料との接触を検出することが可能であり、作製したプローブによりマイクロスケール構造物の3次元形状を測定することが可能であった。 今後は本研究で開発した全方位の接触検出が可能な高感度検出型プローブを用いて、実際のマイクロノズルなどの計測に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では熱引き加工により先鋭化された中空ガラス管であるナノピペットの先端にチップボールとなるガラス微小球を配置するために、光学顕微鏡観察下で取付作業を行う組立装置を試作した。この作製方法は電気泳動法を用いる当初の計画と比較し、再現性が高く、取付強度も強いことが確認された。 またナノピペットプローブを非剛性軸方向に振動させ、その振動振幅の変化からシェアフォースを検出し、3軸方向の接触検出を試みた。開発した微小球付きナノピペットプローブに対して3軸方向から測定試料を接近させた。プローブは水平1軸方向に振動せられ単一のセンサにより振動振幅が検出されているが、全軸方向においてプローブ振動振幅の変化が確認された。プローブを水平方向に振動させることによって、剛性軸に垂直な方向だけでなく、水平方向でも接触検出感度は著しく向上され、全方位の接触検出が可能となった。また各軸方向における接触検出の感度はそれぞれに異なる値を示しており、接触する軸方向と検出感度には関係性があるものと推測される。すなわち、1軸方向の振動検出から接触方向の判別ができる可能性が確認された。 さらに微小球付きナノピペットプローブは5 nmステップの変位検出が実験的に観察され、ナノメートルオーダーの分解能が達成されていることが確認された。また開発したプローブと精密位置決めステージを組み合わせることにより、マイクロメートルスケールの微小構造物の形状計測を実施した。形状計測については当初の予定よりも早く初年度中に予備実験まで実現することができた。また形状計測において、サブマイクロメートルの繰返し精度が確認された。 以上の得られた成果より、本年度の達成度は当初の研究目的以上に達成していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの取り組みにおいて、本研究で開発した微小球付きナノピペットプローブはマイクロメートルスケールの微小構造物をナノメートルオーダーの分解能で形状計測できる能力を有していることが確認された。今後の研究推進方策として、以下の点について取り組む。 まず始めに、本研究で開発している形状計測用プローブと精密位置決め装置を組み合わせることにより測定範囲の拡大を試みる。本研究において測定対象としているノズルやスリットの開口自体はマイクロメートルオーダーの構造を有しているが、計測用プローブの位置決め操作を行うためには数ミリメートルの動作範囲が必要となる。一方で位置決め装置は、動作範囲が広くなるほど位置決め誤差が増加するという問題点を有している。そこで位置決め誤差を補正し、形状計測における測定精度の向上に取り組む。既知の形状を有する標準試料を用いてプローブによる接触検出から位置決め誤差を算出し、測定された形状の補正を行う。これによりサブマイクロからナノメートルオーダーの計測精度の実現を目指す。 つぎにマイクロノズルやマイクロスリットなどの実際の計測対象を想定した開口内部側壁およびエッジ部分の形状測定に取り組む。得られた形状データに基づいて、粗さや真直度、平面度、エッジ角度などの見積りを行い、幾何形状および設計形状との比較評価に利用する。 これらの取り組みを通してマイクロスケール部再構造物の3次元形状計測手法の開発および評価方法に関する検討についての研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(9 results)