2012 Fiscal Year Research-status Report
金属粉末の金型成形時における成形割れ発生予測手法の開発
Project/Area Number |
24760111
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
谷口 幸典 奈良工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10413816)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 粉末冶金 / 粉末成形 / 圧密挙動 / 破壊 / せん断強度 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は,粉末成形~焼結法によるものづくり生産現場で問題となっている,圧粉成形工程における圧粉体割れ発生を精度よく予測するために,数値解析と実験の両面から,高圧下における金属粉末圧粉体のせん断破壊挙動を解明することである.平成24年度は,筆者らが提案している圧粉体のせん断強度の直接計測試験法を実現するための試験装置の改良製作,ならびに試験方法の確立を図った. 1.試験装置の改良製作 本研究費で一面せん断試験装置の試験部に関する構成部品を新たに製作した.必要な加工は,技術職員の協力によってマシニングセンタ,NC旋盤,ワイヤカット放電加工機等にて行った.この試験部を,既存設備である島津製作所製サーボパルサーに対して取りつけた.さらに,サーボパルサーの作業部分において水平方向に新たにせん断用アクチュエータを取り付けられるように支持台の設計製作を行った. 2.試験方法の確立 新たに導入する設備であるせん断用アクチュエータの仕様をさらに詳細に決定するために,予備実験として,圧粉体の一軸破壊試験ならびに半径方向圧裂試験を行った.その結果,破壊条件式の実測に関して精度を確保するためには,より低速なストローク制御が必要であることが判明した.そこで当初導入予定であった油圧サーボシリンダよりも微細な動作が可能なサーボモータ式シリンダを特注によって作製導入した.これにより,せん断中は試料の収縮・膨張挙動を主軸シリンダ変位として検出しつつ,破壊界面に作用する垂直力が一定となるようにストローク制御できるようになる.なお,予備実験の結果から,破壊に関する材料定数の簡易的同定を行った.その知見は(社)塑性加工学会関西支部若手技術交流会,および,日本機械学会関西支部定時総会講演会にて発表している. 以上,これまで計測が困難であった破壊に関する降伏曲面を検討する試験装置とデータ取得方法を確立できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに提案する試験機の試験部分を再設計し,技術職員の協力の下で効率良く製作した.既存設備に対する支持台の増設作業も順調に進んだが,せん断用アクチュエータの仕様の選定に係る予備実験結果から,サーボモータ式アクチュエータの特注が必要となり,その納期の都合上,当初目的の基礎的な実験データ取得までには至っていない.しかしながら,予備実験結果の知見として簡易的な破壊条件式および材料定数の同定方法についてまとめることができたためそれを学会発表した.この知見を活かして,結果的に当初の目的を十分満足する試験機を提案・完成することができた.加えて,既存設備の有限要素法数値解析ソフトウェアによって研究を進めた結果,圧粉体の破壊のモデルケースとして微細押出し加工が適していることなど検討を行っている.よって,本研究課題の進展状況はおおむね順調と言えるものである.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,これまでに蓄積したデータの追試験を行い,作製した試験機の動作および提案する試験手法・手続きにを迅速に確認・検証する.既に垂直荷重制御が十分に行えることを確認している.その後,破壊条件式の提案とそれに含まれる材料定数の吟味を行う.そのために,新たに導入する個別要素法数値解析ソフトウェア“PFC2D”によって破壊条件式をシミュレートし,数値解析を行う.シミュレーション結果が実際の破壊挙動を再現しているかどうかを確認し,その結果が良好であれば,これまで既知となっていなかった,潤滑剤添加量や粒度分布,粒子形状などの因子が破壊条件に及ぼす影響を,実験および数値解析の両面から詳細に考察することが可能となる.このように,これまで定量的知見を得ることができなかった圧粉体の破壊挙動を明らかにすることで,より精確な破壊条件式の確立を図っていく.なお,H24年度においては既存設備である汎用有限要素法解析ソフトウェア“LUSAS”によって,簡易的な破壊条件式の仮定の下での数値解析を実施しており,その結果をH24年度日本機械学会関西支部定時総会講演会にて発表している.この結果と,新たに導入する個別要素法数値解析手法の結果と照らし合わせることで研究を効率的に推進できるものと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で対象とするような粉体層の崩壊に及ぼす粉末因子の影響は,粒子間摩擦係数など粒子間の相互作用を考慮することができる個別要素法によって初めて検証可能となる.H24年度に確立した一面せん断試験法の結果を吟味し,得られた破壊条件式を活用するための備品として,HCItasca社製:2次元粒状体挙動解析システムPFC2D一式を購入し,金属粉末圧粉体における一面せん断破壊挙動をシミュレートする解析環境を構築する.以上の手続きで,実験データを反映する降伏曲面の検証ならびに構成式(破壊条件式)中の材料定数の同定を精度よく実施していく.また,得られた結果を学会発表するための旅費として使用する.
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