2013 Fiscal Year Research-status Report
金属粉末の金型成形時における成形割れ発生予測手法の開発
Project/Area Number |
24760111
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
谷口 幸典 奈良工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10413816)
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Keywords | 粉末冶金 / 粉末成形 / 圧密挙動 / 破壊 / せん断強度 / ダイレイタンシー |
Research Abstract |
本研究課題の目的は,粉末成形~焼結法によるものづくり現場で問題となっている圧粉成形工程における割れ発生を精度よく予測するために,数値解析と実験の両面から,高圧下における金属粉末のせん断破壊挙動を解明することである.平成24年度は,予備実験として圧粉体の一軸破壊試験および半径方向圧裂試験を実施し,破壊条件式の実測のための一面せん断試験法において必要となる実験精度などを調査して,その結果から,垂直応力を一定に保ちつつせん断破壊を生じさせることが可能な新たな一面せん断試験機の製作を無事に実現した.平成25年度はその試験機を用いたデータ取得に努めるとともに,新たに個別要素法数値解析ソフトウェア”PFC2D”を導入し,破壊条件式における材料定数取得および破壊条件式の数値シミュレートを行い,実験と解析の双方から研究を進める環境を構築した. まず,せん断試験では一般的な焼結機械部品として多様される鉄系焼結合金を対象とするための基礎データとして,アトマイズ鉄粉を原料粉末として用い,パラメータとして粒径,潤滑剤添加量を変化させて,せん断破壊条件の調査を行った.加えて,主軸シリンダ変位の変化として圧粉体のせん断に伴う膨張収縮挙動の実測に挑戦した.結果,垂直応力とせん断応力の関係が密度比によって異なる曲線群で表されることを証明するとともに,その際においては圧粉体の膨張収縮挙動がいわゆる粒状材料におけるダイレイタンシー挙動と同様に観測されることを見出すことに成功した.さらに,その結果を個別要素法にて再現することに挑戦し,結果,実験結果をある程度模擬できることを見出した.これらの結果について,日本塑性加工学会連合講演会,ならびに日本機械学会関西学生会卒業研究発表会にて,計3件の講演論文として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試験機はほぼ期待通りの仕様を満たし,安全に運用できている.一部,予算の都合上で申請当初に予定していた加圧力での試験を行える十分な容量のサーボシリンダを調達できなかったために,ステンレス粉末など強度の高い材料については低密度の場合でしか調査できないという問題があるが,今後の試料形状の小型化も十分に可能な試験精度を確認しているので問題ないであろう.数値解析においては,適切なパラメータの同定において時間を要したものの,最終的に実験結果を模擬でき,実際の実験では計測ができない粒子間摩擦係数をパラメータとして模擬実験を行うことができることを確認した.加えて,本研究を推進するにあたって副次的に生じたモデル実験である”金属粉末を介した微細加工”の提案を行っており,その結果で,粉末のせん断圧密挙動が重要であるという知見と,そのための粒子間摩擦の制御の重要性が見出されている.よって,本研究課題はおおむね順調に進展していると言える.なお,粉末を介した微細加工についてはH26年3月27日に国際会議ICOMM2014(Singapore)にて発表を行い,会議プロシーディングとして公表されている.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたり,昨年度までに導入した実験装置と解析設備を活用して,まとめとしての破壊条件式の提案とその活用を行う.まず,圧粉体の破壊を模擬した数値解析モデルとして,粒状材料の降伏条件式である修正Drucker-Pragerモデルに含まれる材料定数の物理的意味合いを明らかとすることで,粉末因子(材料強度,粒径,粒子間摩擦)の影響を解析にて反映できるように改良する.その結果として,モデルとして円筒フランジ形状の圧粉解析を行い,実際の製造現場で問題となる成形不良を予測するモデルとしての有用性を実証する.
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