2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24760113
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
吉冨 健一郎 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, システム工学群, 准教授 (40546149)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 平坦化研磨 / 冷凍液 / 反り / 薄型基板 / 冷凍ピンチャック / 石英ウエハ |
Research Abstract |
(1)冷凍液の大流量霧化技術の検討について,超音波式よりも大幅に霧化量を増大可能な回転霧化式ノズルを採用した.冷凍液は蒸発するために短時間で塗布を完了する必要があり,回転霧化式ノズルは,φ300mmのエリアを塗布するのに十分な量の霧状の冷凍液を1min程度で生成する能力があり,本研究の仕様を十分に満たすことを確認した.また,本霧化法は霧サイズや噴射範囲を調整できるので,霧サイズが大きく,噴射エリアが広い最適な噴射条件での塗布が可能となった. (2)大面積の多数の極小ピン上に冷凍液を均一塗布するシステムの開発について,回転霧化式ノズルを用いた塗布システムを構築し,φ300mmの冷凍ピンチャックへの均一塗布を実現した.ノズルの噴射分布は正規分布のようになっており,均一に塗布するために,塗布対象である冷凍ピンチャックを揺動させてその速度を制御することにより塗布量を均一化する方法を開発した.これにより塗布エリアほぼ全面のピン上に高さ約150μmの冷凍液の液滴を形成することを可能にした. (3)φ300mm試料を用いた凝固固着実験による無変形保持特性とせん断剥離強さの評価について,(2)で構築したシステムを用いて実験用ピンチャックに冷凍液塗布を行い,チャック冷却によりφ300mmの石英ウエハを凝固固着保持し,保持前後の変形量を測定した.結果,目標の±0.3μmに対して±1μmとなった.ウエハ載置時に冷凍液の表面張力が主な変形要因であることが明らかとなった. (4)高平坦化研磨装置搭載用の実用型冷凍ピンチャックの設計と製作について,チャック内部のクーラント流路によって冷却する研磨用冷凍ピンチャックを設計・製作した.構築したシステムによりチャック全体を5℃以下に冷却することが可能となり,φ300mmの石英ウエハを凝固保持して研磨可能であることを実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,大型サイズの薄型基板を冷凍ピンチャックの保持原理で凝固保持するための要素技術について開発を行った.(1)本方式のキーテクノロジ-である冷凍液の霧化方法と塗布方法について,回転霧化式ノズルと揺動塗布方法による塗布システムを構築し,φ300mmのピンチャックのピン上に冷凍液を短時間で均一に塗布することを可能にした.本塗布システムを用いて反り量の異なるφ300mm石英基板を用いた凝固保持実験を行い,変形特性を明らかにした.従来型冷凍チャック方式と比較して冷凍ピンチャックによる変形量は1/10以下を達成する.しかし,目標の±0.3μm以下は表面張力の影響で達成が難しいことがわかった.(2)本チャックシステムを研磨で使用するために,冷却機構を備えた研磨用φ300mm冷凍ピンチャックを設計,製作した.本チャックを研磨機に搭載し,各種特性を評価した.冷却特性では,冷凍液が十分な固着強度を得る5℃にチャック全体を一様に冷却可能なことを実証した.保持特性については,研磨機上でも基礎実験と同様の変形特性が得られることを明らかにした.(3)研究計画外で,研磨時の熱や摩擦力による基板はく離を防ぐために,凝固冷凍液の冷却能力を高める新機構を冷凍ピンチャック設計に加えた.これはピン間をクーラントで満たす機構であり,通常の凝固固着では研磨開始から数分で基板はく離を起こすが,本機構により,30min以上の実用的な研磨時間をはく離せずに基板保持することを可能にした.(4)本チャックシステム使用した場合の最適加工条件の検討および高平坦研磨,最終目標である無反り薄型基板の創成実験は未実施である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の要素技術開発についてはほぼ達成しており,無反り基板創成のための研磨プロセスの確立について研究を進める. (1)冷凍ピンチャックの冷却能力向上:研磨用冷凍ピンチャックの冷却系統の温度分布特性の評価を行う.クーラントの流れの観察や赤外線カメラによる温度分布測定により,チャックの冷却性能を調査し,冷却速度の向上およびピン間のクーラント供給の安定化のための構造を新たに設計し,新型の冷凍ピンチャックを製作する. (2)冷凍ピンチャックを用いた研磨の加工特性:揺動位置固定および等速揺動研磨実験を実施し,研磨圧力およびせん断力や基板上に供給されるスラリーが冷凍ピンチャックの性能に及ぼす影響を調べるとともに,従来チャックと同様の加工特性が得られることを検証し,加工条件を最適化する.続いて,高平坦化研磨手法として確立している研磨シミュレーションを用いた揺動速度制御型研磨により平坦化加工実験を行う. (3) 無反り薄型基板の創成実験:反りと平坦度を含めて10μm以下の薄型基板を創成するために,提案する研磨プロセスを実施して実用化について検証し,本技術確立のための基礎研究としての成果をまとめる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品として,SiC製冷凍ピンチャックおよび付属機器特注仕様(コバレントマテリアル株式会社,一式1,200,設置機関 防衛大学校),消耗品として,冷凍液(×5L@30/L 計150),石英ウエハ(×5@30/枚 計150),研究打ち合わせ(40),学会発表(300),論文掲載(60),以上の合計1,900を予定している.(金額単位:千円)
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