2013 Fiscal Year Annual Research Report
高配向CNT膜による低静止摩擦・高動摩擦材料の開発
Project/Area Number |
24760116
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
月山 陽介 新潟大学, 自然科学系, 助教 (00533639)
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Keywords | CNT / トライボロジー / 接触 / 案内面 / 動摩擦係数 / マイクロ・ナノテクノロジー |
Research Abstract |
静止時からの動き出しをスムーズに行い精密な位置決めを行うためには,動摩擦係数に対し低い静止摩擦係数を発現するような材料が望ましい.しかし,一般的には逆の性質を示すことが多い.そこで表面に特殊な構造を付与することにより,低静止摩擦および高動摩擦係数の特性を発現させることを目的として本課題を遂行した.平均直径5nmのカーボンナノチューブ(CNT)は,強度および柔軟性に優れ,それらがブラシ状に密集したナノ構造材料では高耐久性も期待できる.一般にナノ構造を有する表面は,特殊な現象を発現する一方で繊細であり接触によって破壊されやすい事もあるため,可能な限り高密度にCNTが配向しているものを用いた.微小荷重測定が可能な摩擦試験装置を製作し,CNTが垂直配向したナノ構造を特徴とした材料を用いて実験を行った結果,静止時から動摩擦へのスムーズな移行が見られた.また,CNTの座屈などによるナノ構造の変形が観察された.この摩擦特性と変形の影響については,荷重をより精密に制御可能な装置による検討が必要である.そこで,摩擦特性がより顕著に発現するような変形を生じさせるための接触条件を明らかにするため,接触面観察によってCNTが接触面圧数百MPa以上で座屈し始めることが判明した.また,ナノインデンテーションによる荷重―変位応答により機械的特性を評価し,より鋭い形状が「刺さる」ことで個々のCNTが座屈(もしくは曲げ)変形しやすくなることが判明した.CNT膜の接触熱抵抗計測実験による検討において,CNTの長さの半分以下程度の粗さを有する表面の方が鏡面加工の表面よりも低い接触熱抵抗を示したことからも,CNTの変形が鋭い突起において起こりやすいことを示唆する結果が得られた.以上から,CNTの摩擦特性およびそれに及ぼす変形の影響についての重要な成果が得られたと言える.
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