2012 Fiscal Year Research-status Report
高温度環境における液体金属中の流速分布計測技術の研究
Project/Area Number |
24760147
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
大林 寛生 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究員 (40446464)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究課題では、平成24~26年度の3年間をかけ、500℃近傍の高温度条件における液体金属流動場計測を実現する技術の研究開発を実施する。課題項目としては、(A)音響伝播管を備えた高温対応型超音波センサーの開発、(B)実際の液体金属流動場への適用と、材料腐食と流れ場との関連性検討、の2項目を設定した。平成24年度は本課題の実施初年度として、項目(A)についての研究開発を実施した。 超音波センサーの開発にあたり、信号の送受信系(センサーユニット)の設計に必要な予備解析、および今後の開発に使用する振動素子の調達と簡易的な信号送受信試験を実施した。波動方程式を用いた予備解析では、伝播管材質の検討と素子との接続条件の検討を実施した。伝播管材質の検討では、事前の解析で得られたAl(48%)の他に、Si(52%)が溶融鉛ビスマス(LBE)に対して優れた透過性を示した。装置外壁の存在を考慮した条件では、外壁(SUS316)と同様の材質を用いた際の透過率が28%であり、これに対してAl、Siは30%程度の透過率まで減少する予測結果が得られた。これは、伝播管材と外壁材との音響特性の違いが大きく影響したものであると考える。同様に、素子と伝播管の接続条件においても、既存のセンサーとの接続方式では素子前面被覆の影響が避けられないため、素子を直接接続する方式を採用した。振動素子には従来型のPZTを採用した。耐熱温度限界が約365℃である点から、本課題で最終的な目標である500℃近傍の温度条件に直接適用することは不可能である。採用理由として、伝播管によって熱的な影響を回避する手法を採用しており、これによる信号強度低下を考慮して、信号送受信における感度を最優先したためである。簡易試験では実用(150℃以下)に問題がないことが確認され、次年度以降に伝播管と接続した状態での試験を実施する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の申請期間のうち、平成24年度における課題として伝播管の固体材料、液体金属内部および固-液境界面を伝播する超音波パルスビーム特性の検証を目的とした解析を実施した。解析には二次元弾性波動方程式を用い、①伝播管の材質による影響、②伝播管内での信号の状態、③伝播管から計測対象へ透過する際に通過する固-液界面での透過率を中心に評価した。計測対象は溶融鉛ビスマス(LBE)とした。解析の結果、伝播管とLBEが直接接触する条件では、材質としてAlの他にSiが優れた透過性を示した。一方で、容器壁面を介して計測を行う条件では、両者共に壁面材と同じ材質(SUS316)を用いた条件とほぼ等しい透過率まで低下することが確認された。この要因として、管壁材と伝播管材、両者の音響インピーダンスの差の影響が考えられる。また、信号を送信する振動素子直径に対し、管径の大きさが小さい場合は伝播管内部側面で信号の多重反射が発生することが確認された。この点においては、素子直径が5mmの条件に対して、管径を15mm以上にすることで回避できる見込みを得た。一次元解析では、単純に管の長さを送信信号波長の整数倍に相当する長さとすることで、最適な透過率を得ることができる(極端な例としては90%以上の透過率)という結果が得られた。しかしながら、二次元解析では径方向の影響が現われるため、透過先の対象と音響インピーダンスが近い材質であっても透過率が減少し、見込みとして50%近辺の透過率となることが確認された。これらの解析結果を実際の計測系に反映する上での問題として、送信信号の波長に合わせた条件での伝播管長さの加工や、透過先の計測対象と接する壁面の濡れ性が考えられる。これらの問題点については次年度以降対応する予定であり、今年度目標としては概ね順調に達成されたものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に実施した予備解析結果をもとに、伝播管の製作を行う。サイズについては、計測時の取り回しを考慮し、長さ50-100mm程度、直径15mm程度とする。形状については一様材質の円柱構造の他に内部構造を変えたものを製作する。性能評価を実施するため、常温状態(100℃以下)における音圧計測システムを製作する。計測にはXYZステージに設置されたニードルハイドロフォンを使用し、恒温槽により温度条件を一定に保った状態で、伝播管端面より流体中へ照射された超音波信号の出力を電圧値として計測する。計測条件として、信号の各パラメータ、介在物の有無とその厚さ(2-5mm程度)、および材質、媒質(シリコンオイル)の温度を与え、各条件におけるデータを取得し、数値計算結果との比較検討を実施する。 上記試験で基本的な性能評価を行った後、高温条件(100-300℃)での試験を実施する。試験では、当初は溶融鉛ビスマスでの計測を想定していたが、実験者の安全性の観点から、計測媒体を難燃性作動油とすることも検討する。媒体で満たされた容器内に設置された反射体へ製作したセンサーから信号を送信し、デジタルオシロスコープで計測して反射信号の電圧、形状を調べる。その後、反射体を計測線方向に往復移動させ、その際の計測信号データを用いて位置検出の評価を実施する。また、解析および実験の結果を反映した伝播管を製作し、明らかとなった結果などについて論文にまとめる。 その後、開発した伝播管計測系を実際のLBEループ内部流動計測に適用し、結果について評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は超音波信号の検証試験装置を製作するための費用として、設備備品費(1,580千円)を要求する。平成24年度実施予算において、受領額と支出額に6,205円の差額が出ている理由として、①受領額枠内での予算執行において当初想定していた物品の仕様の見直しをしたため、②購入時において当初想定していた仕様見積り額と契約額に差額が発生したためである。発生した差額については平成26年度受領額と併せて課題遂行に必要な機器・消耗品の購入にあてる。
|