2012 Fiscal Year Research-status Report
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24760159
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
植村 豪 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (70515163)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | CO2地中隔離 / 多孔質内二相流 / 微粒化 / X線CT |
Research Abstract |
大気中への多量のCO2排出を防ぐ二酸化炭素回収隔離(Carbon Capture and Sequestration, CCS)において,CO2地中隔離が実用化に最も近いCO2削減技術として期待されているが,CO2は浮力によって地下帯水層中を上昇するため,地表へのCO2漏洩リスクを低減させる,社会的受容性の高い地中隔離手法の確立が求められている. 本研究ではナノスケールまで微粒化したCO2を帯水層に圧入し,浮力を分散させた安定性の高い地中隔離手法を提案する.本年度は実際の帯水層内と同様の高温・高圧条件においてナノスケール超臨界CO2を生成し,微粒化状態の観察と粒径分布の時間発展の計測から,ナノスケール超臨界CO2の安定性を調べた. 水とCO2の体積比1:1,界面活性剤水溶液濃度2 vol%,温度32℃の条件でスタティックミキサーを用いて微粒化したところ,ザウター平均粒径17 nmのナノスケールCO2を生成することに成功した.時間と共に合一やオストワルドライプニングが生じ,徐々に粒径が増加する様子も観察されたが,実際のCCSにおいて帯水層への注入に要する時間スケールよりも十分に長いことが分かった.また,温度・圧力条件を制御してCO2密度をパラメータとした実験により, 低密度であるほど粒径の増加速度が大きいことも見出した. さらに帯水層を模擬した多孔質内にナノスケール超臨界CO2を圧入し,X線CTを用いて時間経過に伴うCO2分布の変化を可視化した.ナノスケール超臨界CO2は多孔質中で徐々に粒径が成長するものの,空隙内で安定してトラップされており,多孔質中でのCO2分布はほとんど変化しないことを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はCO2をマイクロスケールまで微粒化することを目的としていたが,平成24年度中にCO2をナノスケールまで微粒化することに成功し,帯水層内への浸透抵抗を大幅に低減できる可能性を示した.さらに微粒化の際の粒径がCO2の密度に依存することを見出しており,温度圧力条件によって生成されるナノスケールCO2の粒径を推算,制御する指針も得られた. また,平成25年度に予定していた,多孔質内における微粒化CO2の可視化実験にも既に着手し,帯水層を模擬した多孔質内にナノスケール超臨界CO2が浸透し,さらに安定してトラップされることが示された.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究により,多孔質中に注入したナノスケール超臨界CO2は安定してトラップされることを示したが,注入時の浸透過程については,依然として詳細なメカニズムは明らかではない.このため,多孔質構造や空隙径分布をパラメータとして,ナノスケール超臨界CO2の浸透挙動を観察すると共に,最適なCO2粒径分布を求める.また,CO2 をそのまま圧入する場合のCO2/水二相流の流れ場は界面で生じる毛管圧によって決定付けられるが,マイクロ液滴では一般的な二相流や単相流と流動過程が異なると考えられ,多孔質中を浸透,拡大していく際の挙動について,実験的に観察する.実際の地中隔離において必要不可欠な,空隙構造に対するCO2 マイクロ液滴の浸透範囲や,単位体積当たりのCO2 貯留量についても定量的に解析する.これらの実験については,平成24年度度は直径の小さい多孔質サンプルを用いていたが,平成25年度は直径の大きなベレア砂岩を用い,実際の帯水層とほぼ同等のサンプルによる実験進めることも視野に入れる. また,界面活性剤は使用しない方法も検討しながら,よりCO2の微粒化に適した界面活性剤の選定も並行して進める. 最終的には平成24年度のナノスケール超臨界CO2 の粒径制御手法の確立と多孔質内での超臨界CO2の安定トラップの可視化結果,さらに平成25年度の多孔質内ナノスケール超臨界CO2移流現象の解析から,帯水層中でのナノスケール超臨界CO2の浸透メカニズムについて総合的な考察を進め,実用化に向けた基礎的知見を統括し,CO2 安定地中隔離の実用化に資する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
X線CTを用いた可視化実験において,X線透過性の向上と耐圧強度を両立し,コントラストの高い鮮明な画像を得るため,薄肉チタン容器の外周にカーボン繊維樹脂(CFRP)をコーティングした可視化容器の導入を進める. また,動的な浸透挙動を可視化するには,高倍率実体顕微鏡による直接観察が有効であるが,耐圧ガラスの厚みと対物レンズの作動距離を両立することが困難であるため,現状のX線CTを用いた可視化実験を基本とし,得られた実験データを基に検討を進め,最適な実験系を構築する. 消耗品では,実験試料として液化炭酸ガスと造影剤,実験装置部品として配管,バルブ,圧力計,圧力制御弁などの購入を予定している.また,X 線CT の撮影データは1 回につき1-2GB の容量になるため,可視化データが保管できる大容量デバイスを購入する.研究成果の対外発表を積極的に行うため,国内会議や国際会議への参加,および論文投稿も実施する.
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