2012 Fiscal Year Research-status Report
重力場における衝突利用機械に発生する低周波振動のメカニズム解明
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24760181
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
森 博輝 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50451737)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 振動機械 / 衝突 / 低周波振動 / 異常振動 |
Research Abstract |
平成24年度の研究においては,周期的な強制加振力を受ける1自由度ばね質点系の上に緩衝材のゴムを介して質量が置かれた2自由度衝突振動系(以下,1自由度ばね質点系を構成する下側の質量を下質量と呼び,下質量の上に置かれた質量を上質量と呼ぶ)の装置を用いて実験を行った.その結果,加振振動数が高い領域において低周波振動成分が成長する現象が見られた. 系を簡単化した解析モデルの運動方程式に関する検討を行った過去の研究成果から,上質量と下質量を合わせた系全体の重心変位の位相と両質量間の相対変位の位相の間の関係によって,低周波振動の発生の有無が決定されるという知見が得られていたが,本年度に新たに実施した数値シミュレーション結果から,従来とは異なるパラメータにおいてもこれが成り立っていることを確認した.この結果から,低周波振動成分によって重心が上昇しているときに上質量が下質量から高く飛び跳ね,重心が下降しているときに低く飛び跳ねる位相関係が低周波振動の発生メカニズムである可能性が高いことが示された. さらに,この位相関係について確認するための実験を行い,得られた波形を周波数解析した結果,低周波振動が成長しているときには上記の位相関係が成立しており,低周波振動が起こらないときには逆の位相関係となっていた. 一方,低周波振動に及ぼすパラメータの影響を調べるために,加振振動数に加えて加振力の振幅も変化させながら数値シミュレーションを行い,低周波振動の発生の有無を調べた.その結果,加振振動数が高く,加振力の振幅が大きい場合に低周波振動が発生するという結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記したように,本研究課題の目的は,振動ふるいをはじめとする衝突利用機械においてしばしば発生する有害な低周波振動を対象として,その発生メカニズムを解明することである. 現在までに2個の質量(上質量および下質量)からなる実験装置と,その解析モデルが問題なく完成している.また,【研究実績の概要】欄でも述べたように,これらを用いて行った実験と計算で得られた成果によって,低周波振動成分によって系全体の重心が上昇しているときに上質量が下質量から高く飛び跳ね,重心が下降しているときに低く飛び跳ねる位相関係が低周波振動の発生メカニズムである可能性が高いことが計算面だけでなく,実験面からも確認されつつある.これは,理論と実験の両面からメカニズムの解明が順調に進んでいることを意味している. さらに,数値シミュレーションの結果から,周期加振力の振動数や振幅が大きいときに低周波振動が発生することが明らかになりつつある.今後は,より広いパラメータ範囲を対象として解析を進める予定であり,低周波振動の発生の有無についてさらに多くの知見が得られることが十分に期待できる.これらパラメータの影響を整理していくことによって,上記のような低周波振動の発生を引き起こす位相関係が生じる原因まで含めて理論的に説明できるようになる可能性も高い. 以上の理由により,平成24年度までに得られた研究実績について,本研究課題の目的は順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,衝突利用機械に発生する低周波振動に及ぼす種々のパラメータの影響をおもに計算面から調べ,得られる知見の蓄積に基づいて,低周波振動のメカニズムを力学的に説明しうる理論の構築を目指す. 現在までに得られている数値シミュレーション結果において,系に作用する周期加振力の振動数や振幅の値がこれまでに検討を行った範囲よりもさらに大きい場合においては,低周波振動が収まる可能性があることを示唆する結果が得られている.このようなパラメータの影響を計算によってさらに詳しく調べ,【研究実績の概要】欄で述べたような低周波振動成長時に重心変位と両質量間相対変位の間に見られる位相関係と併せて結果を整理することによって,衝突利用機械に発生する低周波振動の発生メカニズムをより明確にできるものと考えている. さらに,計算で得られる結果の妥当性を確認するために不可欠な検証実験も実施する予定である.複数のパラメータを対象として低周波振動の発生の有無に及ぼす影響を実験面から詳細に調べることは時間制約上の困難をともなうため,可能な限り計算面を詰めた後に,必要な実験を選択的に実施する方法が有効かつ現実的であると考えている. 次年度は本研究課題の最終年度であるので,得られている成果を発表することも重要であると考えている.具体的には,国内外で開催される学会に参加して積極的に成果発表を行う予定であり,さらに結果をまとめて学術雑誌に投稿することも検討している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度収支状況報告書において,平成24年度に交付された経費の中で次年度に使用する予定の研究費があるのは,研究成果発表のために必要であると見積もっていた旅費および学会参加費用の支出が当初の予定よりも少なかったためである.これは,参加した国内学会が勤務先の近くで開催されたためと,現在得られつつある成果をより整理した形で公表したほうが社会への還元の観点からより有用で,研究費の使途として適当であると判断したためであり,次年度の成果発表用の旅費およびその他の費目として使用することを予定している. 次年度に実施する研究では,衝突利用機械に発生する低周波振動に対する種々のパラメータの影響を高速かつ高精度に計算する必要がある.したがって,その計算に利用可能な高性能の計算機を購入することを計画している.また,計算結果の妥当性を検証するための実験では,より高い振動数で系を周期加振することも予定しており,そのために必要なスピードコントロールモータや鋼材などの実験関連消耗品を購入することを計画している. さらに,次年度は本研究課題の最終年度であるので,得られている成果を積極的に発表することも重要であると考えている.そこで,次年度は国内で開催される学会だけでなく国際会議への参加も計画しており,さらに学術雑誌への投稿も検討している.これらの実現のために旅費およびその他の費目として研究費の一部を使用する予定である.
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Research Products
(1 results)