ディザーコントロールを用いた低剛性部品加工時に生じるびびり振動抑制に関する研究

2012 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 24760183
• Research Category: Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
• Research Institution: Tokyo Institute of Technology
• Principal Investigator: 中野 寛 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (70433068)
• Project Period (FY): 2012-04-01 – 2015-03-31
• Keywords: 自励振動 / びびり振動 / ディザー / エンドミル加工

Research Abstract

研究初年度は，低剛性の被削材に発生するびびり振動を再現するため，被削材に比べて十分剛性の高いツールホルダを用い，被削材を取り付ける治具を平行板バネで支持する装置を製作した．本装置は，片持ちはり構造治具の先端に被削材を取り付け，はりの面外変位方向が工具送り方向に垂直な方向と一致する構造となっている．本装置は，ディザーコントロールによるびびり振動抑制メカニズムを実験及び解析するために，被削材自身の弾性振動の影響や工具主軸系の振動の影響を無視できる系で設計した．被削材・治具系の実験モード解析およびエンドミルを用いた切削加工実験の結果，本装置では被削材を片持ち梁の先端とする1次曲げモードでびびり振動が発生することを確認し，びびり振動が発生する工具軸方向切込み深さや工具回転数の切削条件を求めた．
ディザーコントロール装置の設計は，当初の計画ではピエゾ素子を用いた加振装置の設計を予定していた．しかし，自励振動の振動数よりも低い場合でも抑制効果があること，励振振幅が大きいほど抑制効果も大きくなるというディザーに関するこれまでの研究結果から，まず小型動電式加振器を用いることにした．加振器を被削材取付用治具に設置し，切削加工中に工具背分力方向に変位加振する装置を製作した．
本加振装置を用いて，切削加工中に強制変位励振を加えた実験を行なったが，顕著なびびり振動抑制効果が得られる励振振動数や励振振幅の条件は現時点で見つけることができなかった．初年度は，実験装置設計および製作に時間を要したため，2年目はより詳細にディザーコントロールの抑制効果検証実験を行なう．さらに，低剛性被削材の動的振動モデルを1自由度振動系でモデル化して，ディザーコントロールによるびびり振動抑制メカニズムを低自由度の簡易解析モデルで考察する．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究初年度の当初計画は，①実験装置を製作し，②ディザーコントロールの励振条件を変えて低剛性被削材の切削加工実験を行ない，びびり振動抑制効果を検証することであった．実験装置製作に関しては，平行板バネで支持した治具に被削材を取り付けることで，低剛性被削材を模した実験装置を設計、製作し、当初の予定通り進んでいる．
この被削材取付治具に小型動電式加振器を背分力方向に加振できるように取り付け，ディザーコントロール無しでのびびり振動発生条件となる軸方向切込み深さと主軸回転数の関係を調査した．ディザーコントロール装置の設計・製作は完了し，強制励振の有無による切削加工実験を行なったが，現時点で顕著なびびり振動抑制効を示すパラメータは得られていない．次年度は，引き続き実験を行ない，数値解析による励振条件の調査と並行し，びびり振動抑制効果が得られる励振振動数や励振振幅の関係を明らかにする．

Strategy for Future Research Activity

研究2年目は，低剛性被削材のエンドミル加工時に発生するびびり振動を再現する簡易実験装置を用いて，ディザーコントロールの励振条件とびびり振動抑制効果の検証実験を行なう．ディザーコントロール無しでびびり振動が発生する軸方向切込み深さおよび主軸回転数において切削加工を行い，ディザー励振振動数および励振振幅とびびり振動抑制効果の関係を明らかにする．ディザーコントロール有無による切削力，被削材の振動モードを比較し，両者の違いを考察する．実験結果を踏まえ，被削材を1自由度集中質量系でモデル化し，非線形項を加味した切削力を考慮し，直接数値積分法を用いた時刻歴応答解析からディザーによるびびり振動抑制メカニズムを検証する．

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

自励振動の振動数よりも低い場合でも抑制効果があること，励振振幅が大きいほど抑制効果も大きくなるというディザーに関するこれまでの研究結果から，当初予定していたディザーコントロール用ピエゾ素子およびピエゾドライブアンプの購入を1年目は見送った．研究2年目は，ディザーコントロールの効果を詳細に調べる実験を行うため，実験データ収録および周波数分析の効率化を加味し，1年目に繰り越した予算と合わせてFFTアナライザを購入する予定である．また，切削実験に使用する被削材，工具の購入費，必要に応じて設計変更した加振装置や治具の製作費に使用する予定である．