2012 Fiscal Year Research-status Report
拘束系の正準理論に基づいた柔軟体の流れ励起振動に対する新たな解析体系の確立
Project/Area Number |
24760190
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
原 謙介 青山学院大学, 理工学部, 助教 (70508259)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | マルチボディダイナミクス / 流体関連振動 / 正準理論 / 拘束系の動力学 |
Research Abstract |
平成24年度は,当初の計画通り,正準理論によるマルチボディダイナミクスの再構築,拘束力を受けるウェブの動的挙動を解析するための新たな流体ー構造連成系の定式化を行った.具体的には【1】拘束系の正準理論を用いたマルチボディダイナミクスの新たな定式化,【2】高次のひずみモデルを用いた非線形弾性力の導出,【3】流体-構造連成系の支配方程式の導出の3点を実施した.まず, Dirac による拘束系の正準理論に基づいた方法によって柔軟マルチボディダイナミクスの定式化を行い(上記【1】),さらに,絶対節点座標法によりモデル化された柔軟体の非線形動力学解析を行った(同【2】).具体的な柔軟体の解析対象としては,まず,2次元問題(はり)を対象とした定式化,ならびに非線形弾性力の効率的な計算法の構築を行った.また,3次元問題への取組みも進んでおり,3次元はり,薄板問題に関して定式化の骨格が固まりつつある.一方,【3】に関しては,Bidkarら(2008),Vaughanら(2010)の報告より,流体力の算出に要する莫大な計算コストの問題を既に把握していたことから,これを解決するための計算法(フーリエ乗算作用素)の応用を試みた.加えて既存の装置を用いて予備実験を行い,新たに製作する予定の実験装置の構成の検討を開始した. また,マルチボディダイナミクス・流体関連振動の国内外の最新動向調査ならびに成果発表として,5,6月にThe Second Joint International Conference on Multibody System Dynamics 2012(シュツットガルト,ドイツ),9月にDynamics and Design conference 2012(横浜)に参加し,該当分野の研究者と意見交換を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要でも示したように,平成24年度は,【1】拘束系の正準理論を用いたマルチボディダイナミクスの新たな定式化,【2】高次のひずみモデルを用いた非線形弾性力の導出,【3】流体-構造連成系の支配方程式の導出の3点を実施した.まず,【1】,【2】に関しては, Diracによる拘束系の正準理論に基づいた方法によって柔軟マルチボディシステムの非線形動力学問題の解析法の構築を行ったのち,提案する手法の計算精度ならびに計算性の評価を行った.当初【2】では,高次の非線形ひずみモデルを用いた弾性力の定式化のみを目標としていたが,その過程において計算コストの莫大な増加が見込まれたため,平行して計算性向上に関する研究を行うことになった.その結果,意図的な拘束条件を系に付加することで近似を施すこと無く運動方程式を簡略化することに成功し,大幅な計算性の向上に成功した.さらに,構築した手法は,数値計算に使用する弾性力の導出過程そのものを簡略化することが可能なため,3次元問題の定式化が非常に容易になった.一方,流体力の定式化に関しては,既存の方法で問題とされている計算性を向上させるためにフーリエ乗算作用素の導入を試みた.現時点では,2次元のベンチマーク問題への応用にとどまっているが,研究対象としている高機能フィルムの製造工程での環境に近い条件では一定の妥当性を示すことに成功している.しかしながら,ベンチマーク問題の1つに関して流体力を多少過大に見積もる結果が得られており,提案した手法に関してより詳細な検討が必要な部分も見られた.こうした流体力の取り扱いに関しては,製作を開始した実験装置から得られる結果と比較するなど,より詳細な考察が必要と思われる.また,出席した学会での研究発表において,手法の有用性に関する一定の理解が得られた一方で,汎用性の向上が不可欠とのご意見も頂いた.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の実施により,特に構造系における正準理論に基づいたマルチボディシステムの非線形動力学解析手法に関しては,構成が固まりつつある.今後は,柔軟体に関して,3次元のはりや板構造を対象として高次の非線形ひずみモデルを導入し,より広い対象に対して適用可能になるように手法を改善する必要がある.同時に提案した弾性力の高速計算法にも改良を加えていくが,特に,有限要素法で用いられている要素を柔軟マルチボディダイナミクスでも利用できるような双方のインターフェィス面の充実も図っていく.これにより,計算性の向上だけではなく,柔軟マルチボディダイナミクスの課題の1つである有限要素法に比べて要素の種類が少ないという問題の解決も見込める. 一方,流体力の解析法に関しては3次元問題への拡張が第1の課題である.特に計算性の問題は,研究対象としている流体関連振動の解析には極めて重要な課題の1つであり,これを解決するための手法としてフーリエ乗算作用素を用いた流体-構造連成系の解析法を構築していく.また,解析の妥当性の検証と現象解明のための実験装置の立案・製作を行う.既報の研究により,研究対象で確認された振動現象は,高い振動数を持ち,かつ局所的に大きな振幅を持つものであることが明らかになってきたため,解析結果を踏まえてこうした現象を捉えるための多点計測システムの構築を行う.また,マルチボディダイナミクスの分野においては,国外において数学や物理といった工学系以外の研究者による報告が多く見られ,特に計算機の性能向上にともなって新たな手法が数多く提案されるようになってきているため,こうした最新の動向を調査していくことで,よりいっそうの手法の充実を図っていく.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に取組んだ高速計算法の構築に関する研究により,当初の予定に比べて計算に要する時間が大幅に変化する可能性が生じたため,平成24年度は計算機の導入を見送った.この新たに構築した手法から概算される計算時間から,平成25年度は計算機を1台購入する(350,000円).また,研究代表者の所属変更に伴って装置製作に関して変更が必要となったため,多点計測装置用のレーザ変位計3台(660,000円)に加えて小型風洞用のブロワ(200,000円)を導入する.さらに,装置製作用の消耗品に対する予算として,機械部品(400,000円),電子部品(100,000円),入出力用インターフェースボード(100,000円)を予定している.また,平成25年度は,マルチボディダイナミクスに関してはECCOMAS 2013(ザグレブ,クロアチア),流体関連振動に関してはASME 2013 Pressure Vessels & Piping Conference (パリ,フランス)が開催されることになっており,こうした 国内外の学会に参加することで該当分野の最新の動向調査,ならびに成果発表を行う予定である(それぞれ,350,000円の旅費を予定).
|
Research Products
(2 results)