2013 Fiscal Year Research-status Report
拘束系の正準理論に基づいた柔軟体の流れ励起振動に対する新たな解析体系の確立
Project/Area Number |
24760190
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
原 謙介 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (70508259)
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Keywords | 流体関連振動 / 拘束系の動力学 / マルチボディダイナミクス / 正準理論 |
Research Abstract |
平成24年度より継続して行っていた「流体―構造連成系の支配方程式の導出」を進めていく中で,流体力の定式化において広く用いられている流れ場の仮定が問題となった.具体的には,後縁でのウェブの挙動と流体の圧力の関係である.この問題は,従来より指摘されていたものであるが,その物理的・数学的な扱いの難しさとそれを実証するための計算コストの問題から十分な議論が行われてこなかった. 本研究では,拘束系の動力学という観点からこのシステムに対する新たな物理的解釈を与えた.これにより,「構造系の変位」と「周囲流体の圧力」から構成される流体ー構造連成系の方程式の導出に成功した.従来法では「圧力」ではなく「速度ポテンシャル」を用いて定式化するのが一般的であるが,境界条件が「圧力」によって与えられるため,新たに導出した方程式は本系を示す上でより本質的なものと言える. また,安定性解析に「フーリエ乗算作用素」を導入することで,計算性の向上にも着手した.この方法は離散フーリエ変換を応用したもので,流体力の効率的な計算が可能になり,計算時間の大幅な短縮につながった.また,固有関数展開法を併用して定式化を行うことで2次元問題から3次元問題への拡張が可能なため,従来法に見られるような3次元問題への拡張の難しさという問題もクリアしている. また,予備解析を行う中で,条件の違いによって大きく変化するウェブの振動形態を正確に把握するためには,可能な限り多くの計測点で変位計測を行う必要があることが明らかになった.そのため,計測点の変更に柔軟に対応できる画像解析を用いた計測システムのほうが本実験には適切であるとの結論に達した.以上を踏まえ,レーザ変位計を用いた多点計測システムから,ウェブ全体の状況を計測するための画像解析と局所的な現象を精度良く計測するためのレーザ変位計とを組み合わせた計測システムへと構成を変更することにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本系の解析で広く用いられている流れ場の仮定の妥当性を検証する中で,この問題が支配方程式の解の存在の有無に関わる重要な問題となる可能性が浮上し,かつ,既に確立されている他の手法にも内在する問題であることが明確になったため,より詳細な解析を行うことが必要になった.この解析により,構造系に比べて流体系の計算の収束性が悪く,構造系に比べてはるかに高次の成分も考慮しないと計算の収束性を確認できないという結果が得られ,一般的に設定されている近似精度は,この事象に対する流体力の計算にとって必ずしも十分でないことが明らかになった. また,この結果は研究計画書の中で平成26年度に予定していた「流れ励起振動の詳細な特性解明」における安定性解析とその際の計算条件の決定に大きく影響することから,平成26年に実施する予定であった解析の一部を前倒しで行った. その結果,①前述の境界条件の設定法や流体系の収束性の問題にも対応できる,②本研究の目的で挙げているウェブのしわや折り返しの影響を剛性項中のパラメータとして反映させることができるという点から,研究計画書中で提案した2つの方法のうち,「平衡点近傍における線形化モデルを用いた安定性解法」が本研究においてはより適切な方法であるという結論に至った. また,予備解析の結果を慎重に吟味する中で,可能な限り多くの点を計測でき,かつ計測点の変更に柔軟に対応できる計測システムが必要であるということが明らかになったことから,画像解析によってウェブ全体の状況を計測システムと局所的な現象を精度良く計測するためのレーザ変位計とを組み合わせた装置へと構成を変更することにした. 全体として大きな研究の遅延にはならなかったが,平成26年度に行う予定であった解析の一部を前倒して平成25年に実施し,代わりに平成25年に予定していた実験を平成26年に実施するという計画の組替えが必要になった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に行った構造系の定式化,ならびに平成25年度に行った流体ー構造連成系の定式化により,研究課題にもなっている柔軟体の流れ励起振動に対する解析体系の構築に関しては,ほぼ作業が終了しつつある.当初,流れ励起振動の安定性解析法の決定は平成26年に予定していたが,平成25年度に行った解析によってより適切な方法を決める方針が立ったため,前倒しで具体的な安定性解析法の選定と計算条件の決定を終了している.そのため,平成26年度は,平成25年度の計画から組み替えた実験の実施が研究の中心となる.具体的には,ウェブの変位計測のための非接触多点計測システムの構築と既存のテストセクションの改良を行う. 研究期間中に研究代表者が青山学院大学から東京工業大学へ異動したが,実験に関しては引き続き青山学院大学の設備を使用する. また,研究計画書の予定ではレーザ変位計を5台使用した多点変位計測システムの構築を予定していたが,限られた観測点数の中で各点の変位を精度良く計測できるシステムよりも,ウェブ全体にわたってより多くの計測点の動的挙動を効率良く計測するシステムのほうが本研究対象については適切であると判断し,画像解析を用いた計測システムへと構成を変更する.なお,レーザ変位計は,概要でも述べた精度の要求される下流側でのウェブの変位を計測する際と,画像解析の結果の検証と特徴的な挙動を示した計測点の詳細なデータを取得するための補助的な装置として実験装置に組み込むことにする.具体的には,高速度カメラと周期的な現象を撮影するためのトリガ(ファンクションジェネレータ)からなる画像撮影部と,局所的な変位を計測するためのレーザ変位計から構成される計測システムを構築し,データ処理用の解析プログラムを作成することで,本事象に特化した多点計測システムの構築を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で新たに導かれた流体ー構造連成系の支配方程式による解析を行う中で,広く用いられている流れ場の仮定が支配方程式の解の存在の有無に関わる重要な問題となる可能性が浮上したため,より詳細な解析を行うことが必要になった.また,この解析結果が平成26年度に予定していた計画に影響することから,平成26年に実施する予定であった解析の一部を前倒しで行うことになった.ここで行った解析により,ウェブ上の計測点の変更に柔軟に対応でき,かつ,より多く点の変位を計測できる画像処理を用いた計測装置と局所的な現象を精度良く計測するためのレーザ変位計とを組み合わせた構成が本研究にはより適切であることが分かり,計測システムの構成案の改良を行った.このように,平成26年度に行う予定であった解析の一部を前倒しで平成25年度に実施し,代わりに平成25年に予定していた実験を平成26年に変更したというのが本件の理由である. 【次年度使用額が生じた理由】で述べた点を踏まえ平成26年度は,画像解析を用いた計測システムに関連したものとして,①高速度カメラ(300,000円),②データ処理用コンピュータ(200,000円),③画像処理用のプログラムを作成するためのソフトウェア(150,000円)と,レーザ変位計1台(330,000円),マルチファンクションフィルタ1台(180,000円)を購入する.さらに,実験装置製作用の機械部品に300,000円,電子部品に100,000円の使用を予定している.また,研究成果の報告のため,7月にASME 2014 Pressure Vessel & Piping Conference(Califolnia, USA)への参加を予定しており,そのための予算として400,000円を予定している.
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Research Products
(3 results)