2014 Fiscal Year Research-status Report
拘束系の正準理論に基づいた柔軟体の流れ励起振動に対する新たな解析体系の確立
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24760190
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
原 謙介 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (70508259)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 流体関連振動 / 拘束系の動力学 / 正準理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度に行った研究の中で指摘した流れ場の仮定の問題(後縁でのウェブの挙動と流体の圧力の関係を表す境界条件)に関する検討とその影響を考慮した安定性解析,ならびにウェブ変位に対する三次元画像計測法の構築を行った.特に解析では,拘束系の動力学問題に対する正準理論を用いることで導出した,「構造系の変位」と「周囲流体の圧力」によって記述される流体―構造連成系の運動方程式を用いて周囲流れによる構造系の安定性問題を解析することで,この問題に関する詳細な検討を行った.本研究で対象としているシステムでは,三次元問題を解析可能なVortex-Latice method(Bidkerら,2008)やDoublet-point method(渡辺ら,2012)などの離散化手法による解析を行った先行研究の中でも指摘されているように,その計算コストが重要な問題となっている.本研究では,平板上における圧力分布の境界条件を満たす基底関数(所謂モード関数)による一般化Fourier級数展開法とFourier乗算作用素とを組み合わせた方法によってこの問題の改善に取り組んだ.その結果,圧力分布に関する基底関数の種類によらず,安定性解析の結果がある解に収束していくことが明らかとなった.しかしながら,使用する基底関数の種類によって収束性が大きく異なるため,最適な基底関数の選定が重要な課題となる. また,二次元解析では実験や一部の先行研究と一致しない結果が得られている部分が存在するため,従来より用いられている平板の後縁でのKuttaの条件(コード方向の圧力分布に関する仮定)に加えて,スパン方向の圧力分布の条件に関しても詳細な検討を行う必要があることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成25年度に本研究で指摘された,板構造のフラッタ解析で一般的に用いられている流れ場の仮定に関する課題を詳細に検証するための解析を別途行う必要性が生じた.そのため,平成25年度に得られた結果を踏まえ,研究計画書中で提案した「平衡点近傍における線形化モデルを用いた安定性解法」に合わせた流体-構造連成系の運動方程式の導出を行い,平成25年度に構築したFourier乗算作用素を組み込んだ安定性解析法の構築を行った.その結果,本系の運動方程式として,構造系の運動を支配する微分方程式と流体系の運動を支配する代数方程式からなる微分代数方程式が得られた.さらに,二次元問題を対象として前述の流れ場の仮定(圧力の境界条件)に関する検討を行った結果,流体力の解析に用いる基底関数の種類に関しては,その選定法に関して一定の自由度があり,導入したそれぞれの関数について適切な打ち切り次数を設定することでほぼ一様な解に収束していくことが明らかになった.しかしながら,関数の種類によって収束性が大きく異なるため,近似精度と計算時間に関しては注意深く検討する必要があることが分かった.また,本年度に行った解析では,打ち切り次数を増加させていくことで解の収束性を確認できたため,既存の文献の中で曖昧だった流体解析の部分に関する計算の収束性を検討する見通しが立った. 一方,ウェブ全体の運動を計測するための画像解析法と局所的な変形を計測するためのレーザ変位計とを組み合わせた計測システムの構築に着手した.装置に関しては,画像解析に要する処理時間に関して改善の余地がある. このように,本研究を進めていく上で明らかになった既存のフラッタ解析で用いられている流れ場の仮定に関する検証を行った結果,当初平成26年度に予定されていた「流れ励起振動の安定性解析と実験による検証」に着手する時期が後半にずれ込むことになった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までに行ってきた解析により,「拘束系の正準理論に基づいた流体-構造連成系の定式化法の構築」に関してはすでに達成できている.そして,導出した方程式が微分方程式と代数方程式によって構成される微分代数方程式となることが明らかになったことから,今後は微分代数方程式を高精度かつ高効率に計算する方法を検討する必要がある.具体的には,得られた微分代数方程式が,微分指数(あるいは微分インデックスとも呼ばれる)が1の微分代数方程式に分類されるということが明らかになっているため,このクラスの微分代数方程式を解析するための手法の構築を行う.また,流体力の定式化に用いたFourier乗算作用素の部分の解析を高効率化するため,高速フーリエ変換を併用したアルゴリズムの構築を試みる.さらに,流体力の近似に用いる基底関数の収束性を向上させるため,有限要素法による固有モード解析のような数値解析の併用を想定した手法の提案も検討している. 一方,実験では課題となっている画像処理の高速化に着手する.具体的には,GPUを用いた並列処理の導入を検討しており,それをサポートするCUDA(C++ベースの開発環境)やOpenCVなどを用いた解析プログラムの構築を行う予定である.画像処理においては,撮影された画像によって処理時間が大きく変わることが想定されるため,実験装置に改良を加えて撮影作業を効率的に行えるようにする.
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Causes of Carryover |
平成25年度の研究成果の中でも指摘した通り,板構造のフラッタ解析において一般的に用いられている流れ場の仮定(境界条件の設定)の考え方に課題があることが分かったため,その検討を行うために研究計画書の中で予定されていなかった解析を追加で行った.そのため,当初予定されていた解析とその結果を踏まえた実験の実施が年度の後半にずれ込むことになった.こうした解析による検討内容の変更に伴い,研究計画に修正を加える必要が生じたことが次年度使用額が生じた理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額として残った予算は,画像処理に用いるCMOSカメラを固定するための治具を製作するための材料代と加工代に使用する.
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Research Products
(3 results)