2012 Fiscal Year Research-status Report
手指機能再建のための随意・自律制御複合型装着ハンドシステムの開発
Project/Area Number |
24760195
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
河本 浩明 筑波大学, システム情報系, 助教 (00400713)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ウェアラブルロボット / リハビリテーション |
Research Abstract |
脳血管疾患,脊椎損傷,寝たきりなどによる手の麻痺等の機能障害は,下肢に比べ実用的レベルにまで回復することが難しく,患者のQOLを著しく低下させる要因となっており,効果的なリハビリテーションが重要な課題となっている.本研究では,手指関節機能(掌屈・背屈運動)に障害をもつ方を対象に,人間と機械を複合融合させる装着型ハンドを活用し,効果的なリハビリテーションための脳の可塑性に基づいた運動機能再建支援システムを開発することを目的とする. 障害を持つ方の運動機能の再建を脳の運動学習として捉える考え方が注目され始めている.脳の運動学習は大まかに3つの段階で捉えることが出来る.第一段階:感覚器から運動中枢への入力(求心性入力)によって,【脳機能が再構成される段階】.患者自らの動作は要求せず他動的な動作で実施される.第二段階:運動中枢から筋へ運動指令が試みられる【運動指令の試行段階】.第三段階:フィードバック情報を基に運動指令が修正され運動が完成していく,【運動指令が形成される段階】.第二段階,第三段階は患者の自らの能動的な動作で実施される. 本研究は,これまでの受動的動作のみの訓練方法とは異なり,ロボット的自律制御と随意制御を活用することにより,上記の求心性入力による運動中枢の機能再構成(第一段階),随意的な運動指令の試行(第二段階),及び運動指令の形成(第三段階)を効果的に行うものである. この他動的動作(自律動作)と能動的動作(随意動作)を融合させた手指関節トレーニングは,これまでのところ研究事例がなく,人の運動学習過程に沿って,脳機能の可塑性をロボット技術が効果的に引き出す有益な知見が得られることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,まず,第一段階として,装着型ハンドの自律制御機構による受動的動作パターンを繰り返すことにより,装着者の筋,靱帯,関節の受容器の刺激から,運動中枢系へ求心性入力を継続的に送り続けることで脳神経系の機能的再構成を促進させていく.第二段階では,受動的動作の中で,装着者は随意的な運動を意識して動作を試みることによって,運動中枢から手指関節動作に必要な運動指令の試行が期待される.第三段階では,自律制御機構と随意制御機構を混在して適用し,試行された運動指令を基に,随意制御機構による能動的動作の割合を徐々に増やしていくことで運動指令の形成が期待される.以上の着想に基づき,二つの制御機構を駆使することで,手指関節機能再建のための支援システムの開発を推進する. 本研究では以下の研究項目を設定することで,本研究の目的を達成する.(1)装着型ハンド機構の開発,(2)受動的自律制御機構の開発,(3)運動指令を試行する動作呈示インタフェースの開発,(4)運動指令を形成する随意・自律制御複合機構の開発,(5)実証試験による評価. 当該年度は,研究目的で掲げた各研究項目(1),(2)に対して,基礎実験による要求仕様の抽出,及び設定を主に実施しすると共に,プロトタイプの開発を行った. (1) 装着型ハンド機構の開発:手指関節の解剖学的に親和する外骨格機構を開発するため,まず,様々なモックを製作し,装着型として,電装系,駆動系,バッテリーの配置を検討,実装した.作業療法の知見に基づいたアシストを可能にするアクティブジョイント機構の開発を行った. (2) 受動的自律制御機構の開発:脳機能再構成を促進するための受動的運動パターン生成器を開発した.連続的な運動訓練動作として掌屈・背屈運動がシームレスに切り替わる運動パターンとした.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では研究項目で設定した (1)装着型ハンド機構の開発,(2)受動的自律制御機構の開発,(3)運動指令を試行する動作呈示インタフェースの開発,(4)運動指令を形成する随意・自律制御複合機構の開発,(5)実証試験による評価,に対して,次年度は,各研究項目(1),(2)に対して,試験により評価・改良を実施する.また,研究項目(3),(4)に対して,基礎実験による要求仕様の抽出,および設定を主に実施し,開発しているプロトタイプに組み込むと共に,評価試験・改良を行う.また,研究項目(5)では実証試験のための準備を実施する. (1) 装着型ハンド機構の開発,および(2) 受動的自律制御機構の開発:健常者による評価試験から課題抽出を行い,改良する.対象となる方に協力していただき評価試験を行い,課題を抽出し,改良を行う. (3) 機能再構成及び運動指令を試行する動作呈示インタフェースの開発:脳機能再構成をさらに促進するための求心性入力として,体性感覚入力を利用したインタフェースを開発する.また,運動パターンに沿って,意識して動作してもらうために,運動パターンを提示するインタフェースを構築する.これにより運動指令試行の促進を図る.健常者による評価試験から課題抽出を行い,改良する. (4) 運動指令を形成する随意・自律複合制御機構の開発:まず,運動意思となる生体電位信号をトリガー信号として(2)で開発した運動パターンを生成する手法を開発する.生体電位信号の計測箇所は掌屈・背屈運動それぞれに関わる主要な筋上の皮膚表面とする.さらに,生体電位信号量に応じて,掌屈・背屈運動の出力が変化する運動パターン生成方法を開発する. これらを健常者に適用し,評価試験から課題抽出を行い,改良する. (5) 実証試験による評価:(a) 実証試験プロトコルの作成.評価手法を明確化するためのエンドポイントを設定する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,「(1)装着型ハンド機構の開発」での改良のための開発経費を消耗品費として計上し,また,「(3) 機能再構成及び運動指令を試行する動作呈示インタフェースの開発」,「(4) 運動指令を形成する随意・自律複合制御機構の開発」にかかる開発経費として,備品費,消耗品費を計上している.また,「(5)実証試験」で実施するリスクアセスメントのための安全規格関連資料を計上している.その他,成果報告等として,国内学会,国際会議の旅費,参加費用,及び,論文投稿費を計上している.
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