2012 Fiscal Year Research-status Report
準自律型操作支援による双腕建機作業の効率性・安全性向上に関する基礎的研究
Project/Area Number |
24760215
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
亀崎 允啓 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (30468863)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 建設作業機 / 知能化インタフェース / 状態識別 / 負荷計測 / 操作支援 |
Research Abstract |
24年度は,操作者支援の効果を左右する外力負荷計測手法および作業状態識別技術を開発した. (1)負荷計測:これまでの基礎開発を基に外力計測技術の性能向上(計測可能な負荷情報の高度化(ベクトル情報)・負荷情報の質の改善(精度,安定性))を行った.大きな非線形性を有する建機マニピュレータは正確なモデリングが難しいため,モデル化誤差に起因する計測誤差を直接扱わずに,できる限り計測性能を向上させる方法論を開発した.計測値に残留する誤差成分(内在誤差)は,直接的な観測(推定)が原理的に難しいため,当該システムにおいて一意に定義しやすい誤差の最大値を用いて定量化した.再現性が乏しく誤差の主要因となる摩擦力をパラメータとし,各シリンダに発生していると推定される誤差の最大値を内在誤差範囲(IER)と定義した.2関節のトルクが必要となる矢状面ベクトル計測においては,複数シリンダからIERが小さい2つを計測シリンダとして利用することで相対的な精度向上が可能となった. (2)状況認識:統計的最適化手法が広く用いられるが,適用分野特有の多様性から発散や局所解に陥る可能性が極めて高い.そこで,これまでの基礎開発(基底作業状態(PSS))を基軸として,時系列特徴量を用いた動的状態識別手法により操作支援と直結する状況認識を行った.操作支援が必要となる状況を建機作業の多様性に依存せずに把握するため,任意の作業状態において共通に出現する事象(特徴量)に着目した.本研究では危険状態を通常に回復させる支援方針とし,物理情報のみに着目した単純なフラグの組み合わせによる注意状態識別手法を定義した.作業状態に応じて意味合いが異なる手先間距離や負荷微分値などを特徴量として支援条件フラグを定義した.フラグ成立に用いる各閾値は,実機実験により計測されたセンサ値の平均値と標準偏差を用いて決定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,準自律操作者支援システムの中で.操作者支援の効果を左右する下位モジュール開発を行った.実用的なシステム構築は,現場にある顕在的なニーズを効率よく汲み上げ,現場が気付いていない潜在的なニーズを発見することが重要である.大学院生をはじめ,建機メーカとの研究連携,制御・学習理論の工学応用を専門とする研究者との意見交換を行える研究体制を構築している.特に,日立建機の研究者数名と月例の研究進捗報告会を通して,実用性と搭載性をはじめとした現実に即したフィードバックを受けることで,有益な研究成果を上げている.外力負荷計測手法に関しては,実装性と高精度化を両立,作業状態識別技術に関しては,確定性と汎用性の両立が,本支援システムに不可欠な要求仕様であったが,これらを満たす手法が開発されたことから,当初の予定に沿って研究が展開できているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度前期は,作業性能を低下させうる状況を判別しその回復動作を支援する操作支援モジュールを開発する.建機作業特有の様々な制約条件からくる各モジュールの性能不備に対しては,「オペレータ=主体,システム=補助」という位置関係に留意し,支援システムが安全かつ確定側へ移行するように(支援によって不都合や危険が生じないように)モジュール群の統合を行う.25年度後期は,各種センサを搭載した双腕実験機を利用して実証実験を行う.次世代作業が実現可能となることを確認すると共に,オペレータの熟練度や作業内容によらず時間効率・省エネ性などの作業性能が向上していることを確認する. (1)操作者支援システム:操作者支援はオペレータに「お節介や邪魔だ」と思われてはならない.物体運搬時の把持力低下に関しては情報提示が妥当であるが,物体落下が作業安全に大きく関わる場合には機械操作に積極的に介入する必要がある.本研究では,作業における非効率動作,物体過負荷動作,衝突危険動作を回避する支援を提供する予定である. (2)評価実験:作業に要求される時間効率・省エネ性・安全性などの評価軸を定量化するために,データ計測手法および処理方法の整備(共通化)を行う.実証実験は,油圧・油温・レバーセンサを備えた双腕実験機を利用する.作業現場を模擬した実験場において,操作経験の異なるオペレータの協力を得て,複雑性の異なるタスクを行う予定である.建機作業は1日8時間程度稼働する長期作業であるため,1-2時間程度の長期実験から時間経過に伴う支援効果の変化についても考察を行う.以上より,支援システムにより,オペレータの熟練度や作業内容の複雑性,さらには作業時間によらず作業性能の向上が図れることを確認する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の研究計画は負荷計測技術・作業状態識別技術の開発であった.開発や実証に必要となる試験機本体は準備済みなので直接的な必要経費はなく,主に研究をスムーズに進めるための研究協力者との打ち合わせ旅費,アウトリーチ活動としての研究成果投稿費・発表旅費が必要となった.操作支援における技術開発および統合評価実験を行う25年度は,廃材運搬タスクや分別解体作業を模擬するための,構造部材(パイプや破壊用の木材など)が必要となる.このとき,作業機のみでは十分に取得しにくい情報(対象物との相対距離や押し付け力など)を補間するために環境側にセンサ(CCDカメラ,ロードセル)を配置する予定である.これにより作業評価を効果的に行うことができる.また,実証実験には実機の計装化が必要となるため,状態認識に必要なセンサ・組み込みコントローラ,実験用のデータロガー,通信システムとしてのCANコントローラを装備する予定である.
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